「ごっ、ごめんなさい……!!ぼ、僕、今日からここに転校してきたので、この学校のルールとか全然知らなくて……」
ビクビク、オドオド。
男子生徒として違和感のないよう低めに整えた声を、恐怖で引き攣ったようにわざと裏返してみせて。
涙目で作った完璧な“怯え顔”のまま、小刻みに身体を震わせた。
そして────
私はゆっくりと、背後の声の主へと振り返る。
……もちろん、絶望に目を見開くような、迫真の演技を添えて。
───振り返った視線の先にいたのは、やはり予想通りの男だった。
少女漫画から抜け出してきたかのように、完璧に整った顔立ち。
あまりの美しさに一瞬目を奪われそうになるが、その綺麗な切れ込みの瞳に宿る光は、まるで氷のように冷酷で。
───他者を寄せ付けない、絶対的な王者のようなオーラを全身から放っていた。
彼の名前は、高瀬 蓮(たかせ れん)。
今回の護衛対象である橘花桃華が"姫"として所属する、全国No.1の暴走族───月華(げっか)の総長だ。
そして───今回の任務を遂行する上で、私が一番最初に"利用"させてもらう男。



