「………由衣」
「…………なんですか?」
「君は、僕にとって、娘のような存在なんだ」
「……………え?」
「僕は、たったの一年間という短い間だったけれど。君を、実の娘のように育ててきたつもりだ」
「…………君が言う、この威厳のない姿も。君にだけ、見せてきたんだよ」
「え…………」
「…………無理に、とは言わない。僕は、あくまで君の意見を尊重する」
「…………」
「だから…………形だけでもいい。君に、”普通の人生”を送ってほしいんだ」
「ボ、ス…………」
「………どう?この任務、任せられそう?」
ジッと、深い緑色の瞳が私を見つめる。
…………娘、かぁ。
そんなこと、はじめて言われた。
でも、私もどこかで…………心の奥底で。
この人と、顔もわからない両親を、重ねて見ていたのかもしれない。
「……わかりました。その任務、引き受けます」
「っ、本当かい!?」
「はい。ボスにウソはつきません」
私は、ボスを信用している。
それは、紛れもない事実だ。
…………だけど。”信用”なんてものは、この業界じゃ通用しない。
「じゃあ、詳しいことはまた後日メールで送っておくから」
「はい」
「…………普通の高校生活、楽しんで」
「……………考えておきます」
「じゃあね」
「はい、失礼します」
私は。
この人を、私に近づくすべての人間を…………。
………………利用する。

