「ある」
「なんでですか………」
「気になるから」
「いや、それ理由にならな………」
「教えろ」
低い声が落ちた瞬間、空気が一段重くなる。
有無を言わせない、圧。
暴走族の総長としての顔が、そのまま目の前に立ち上がったみたいで、息が詰まった。
(……逃げ道が、ない)
翔との関係をどう説明するか、一瞬で頭が回る。
本当のことは言えない。
でも嘘も、ここではもっと危ない気がする。
「………大切な、パートナー……?」
ぎりぎりの言葉を選ぶ。
嘘ではない。
任務上の、命を預け合う相手。
そういう意味では、確かに“パートナー”だ。
これで、なんとかごまかせた。
――はずだった。
「=(イコール)彼氏?」
─────え?
一瞬、頭の中が真っ白になった。
……カレシ? いま、この人、なんて言ったの?
翔が、私の、彼氏……?
「……………っ、はあぁ!? ち、違います! 全然違います!!」
心臓が口から飛び出しそうなほど跳ね上がる。
驚きすぎて、つい素の声に近いトーンで叫んでしまった。
隣のソファにいた李兎たちが「なんだなんだ?」と一斉にこちらを振り返る。
けれど、目の前の蓮さんは、私の否定を聞いても少しも顔を緩めない。
「じゃあ、なんだよ。……あんな夜中に、手まで握られて、お前だって素直に従ってただろ」
蓮さんの瞳に、暗い火が灯る。
それは、あきらかな嫉妬。
(……嘘でしょ。)
あまりにも真っ直ぐで、あまりにも不器用なその独占欲に。
”男”を演じ続けなければならない私の胸は、苦しいほどに締め付けられた。


