君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~



「実は……今回の任務の対象が、だいぶ”困ったさん”でね。どうやら彼女が暴走族に属しているみたいなんだ」


「はっ……?」



あまりにも突拍子のない話に、思わず素っ頓狂な声が漏れる。



自身が、大手企業である橘花財閥の令嬢だというのに。

……その煌びやかな世界とは正反対の、暴走族に属している?


(……意味が、わからない。)




「まあ、暴走族に属していると言っても、彼女自身が拳をふるうわけじゃなく、その暴走族の”姫”という立場にいるらしい」



────姫。


それは、その族に所属するメンバー全員が命を懸けてでも守る、いわば姫ポジションにあたる存在のこと。


姫自身には戦闘能力がないパターンがほとんどなため、姫はその族の弱みとなってしまうことが多い。



つまり───狙われやすい。




(そういうことか────)


……どうやら私は、想像以上に厄介な仕事を押し付けられたらしい。







「───対象のことはよくわかりましたけど、それでは質問の答えにはなっていません。」




対象がイレギュラーで、任務がより難しいものになるということはよく理解した。



でも、それだけでは───私が男装しなくてはいけない理由にはなっていない。