「え………じゃあ、ただの私の思い上がり……?」
彼女は拍子抜けしたように目を丸くした。
………頬を濡らしていた涙が、どこか気恥ずかしそうな赤みに変わっていく。
「そもそも……あの時僕がその話題を口にしたのは、橘花さんを戦場に連れて行きたくなかったからで………」
「そ、そうなの………?」
「は、はい……だから、別に言いふらそうとか、そんなことは一切ないです。」
私は苦笑い混じりに頷く。
人の恋愛事情にどうこう言うつもりはいないけど………だいぶ拗らせてるなぁ。
「…………」
私がはっきりと言葉にすると、彼女は急にうつむいてしまった。
細い指先が、スカートの裾をぎゅっと握りしめる。
「た、橘花さん………?」
「椎名くんは、優しいのね。………大体の人は、少しでも月華の弱みになることなら利用するから。」
「─────」
ドクン、と心臓が跳ねた。
(……優しい? 私が?)
胸の奥に冷たい氷を飼い、嘘で塗り固めた少年を演じているこの私が、優しいはずがない────。



