「それに………一番の理由は、桃華だ。」
今まで、黙ってやり取りを眺めていた蓮さんが、重く、確かな響きを伴って口を開いた
「橘花さん……?」
「桃華が、自分から"仲良くなりたい"そう、言っていたんだ。」
部屋の壁にもたれかかって腕を組み、静かに瞼を伏せた蓮さん。
その声には、単なる義理や貸し借りではない、深い響きが混じっていた
「「「「え………」」」」
幹部たちの間にも、驚きの色が広がる。
あの内気で、どこか他人と距離を置いていた姫が……自ら他人を求めたという事実に、全員が息を呑んだ。
「……………俺は、桃華の願いは出来るだけ叶えてやりたい」
「……………」
そっと、目を開けた蓮さんの瞳は、驚くほど真剣で。
……ああ、この人は本気なんだな、と本能が感じ取った。
彼女のためなら、世界のすべてを敵に回しても構わない。
………そんな覚悟さえ滲んでいる。
「だから………」
彼の視線が、射抜くように私を捕らえる。
蓮さんたちは、愛する姫──桃華のために。
私は、任務と”目的”のために。
一時的な、利害一致の契約。
私は一度だけ深く息を吐き、布団を握りしめていた力を抜いた。
……そして、決意を固めたかのように、レンさんの真っ直ぐな瞳を見つめ返した。
運命の歯車が、後戻りできない速度で回り始めたのを感じながら───



