「「「「「由良、教えろ(てください)」」」」」
圧が、すごい。バイクの排気音さえかき消すような、男五人の一糸乱れぬ斉唱。
逃げ場を塞ぐように取り囲まれて、私は思わず半歩後退りした。
「………いや、なんでそんなこと気になるんですか。蓮さんたちには関係ないでしょう」
「なんでって……気になるから?」
疑問形?
陽人さん、それは理由になってません。
………ここでこれ以上渋れば、また変な推測を上乗せされるだけ。
私は深いため息を一つ吐き出し、観念して口を開いた。
「はあ、………残念ですけど、僕には彼女なんていませんよ。」
”期待に応えられなくて申し訳ありませんね”と、嫌味を込めてフッと瞼を閉じる。
……当然だ。私自身が女なんだから、”彼女”なんてどう考えてもいるはずがない。
組織での生活に明け暮れ、恋なんて贅沢を知る暇もなかった私には、縁遠すぎる言葉だ。
「………逆に、そっちはどうなんですか?」
矛先を逸らすために投げた問い。
……けれど、返ってきたのはこれまた完璧な和音だった。
「「「「「いない(いません)」」」」」
なぜそこで、ピッタリと被るんでしょう。
この人たちのチームワーク、たまに発揮される方向性がおかしい……。
「あ、でも………」
「………まあ、私には一応婚約者がいます。」
「婚約者?」
「ああ。……コイツ、こう見えて立派なおぼっちゃまなんだぜ。財閥とか、そういうレベルのな」
「へえ、そうなんですね」
陽人の言葉に、私はさりげなく頷いてみせた。
……知っている。
最近力をつけてきている世界的貿易会社"AZUMA"。
事前の調べによると、李兎はそこの一人息子であり、次期後継者だ。
婚約者がいるということも、もちろん既知の事実────
「………ってか、そろそろ時間じゃね?」
陽人の声で、そろってバッと見た時計の針はもう19時を指していた。
夜の帳が完全に下り、街がネオンの色に染まり始める。……それは、彼らにとっての「本番」が始まる合図だ。
「お前ら、暴走の時間だ」
バサッと、レンさんが背中の刺繍を誇示するように特攻服を翻し、格好良く立ち上がる。
先ほどまでの、恋だの何だので赤面していた”一人の少年”の面影はどこにもない。
……そこには、数百人の不良を束ねる圧倒的なカリスマ、”月華総長”の姿があった。
「「「「おうっ!!」」」」
野太い返唱が辺りに響き渡る。
それぞれが覚悟を決めた、鋭い眼差し。
「由良、お前に"月華"を見せてやるよ」
そう言って、歯を見せてニカッと不敵に笑ったレンさん。
その眩しすぎるほどの真っ直ぐな笑顔に、私の心臓が──トクンと、一度だけ不規則に跳ねた。

