君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~





「………お前、倒れたんだよ」

「────え?」


「俺たちをかばって、敵が逃げた後に」



彼の言葉が、霧がかった脳内に少しずつ浸透していく。






「敵……?」

「正体不明の黒ずくめ集団」



「──────あっ」




……そうだ、全部思い出した。

バラバラだった記憶のピースが、今、最悪な形でひとつに繋がった。



姫の後を追っていたら、怪しげな黒服の男たちと鉢合わせして。

ソイツらを倒しながら進んで、あわてて現場に駆け付けたら…………。



『元気そうで、よかった』





「─────っ、」


不意に脳裏をよぎった、音のないはずの言葉。

グッと、唇が切れるほど強く噛み締める。


………なんで。
………どうして。




探し続けていたはずの背中。

けれど、それは今、最も出会ってはならない場所で、最も見たくない姿で現れた。


行き場のないいくつもの疑問を、無理やり喉の奥へと押し込む。





(────ダメだ。こんなことでうろたえたら、プロとして…………いや、私自身が終わってしまう。)



私は深く息を吐き、震える拳を布団の下で必死に隠した。





………そして、心配そうにこちらを覗き込む蓮さんに向けて、いつもの「気弱な男子高生」の仮面を、歪に張り付けたのだった。









「────ねえ、」


……沈黙を破ったのは、蓮さんではなく、いつの間にか部屋に戻ってきていたあの少年の声だった。





「君、名前なんていうの〜?」

「…………えっ……?」



ハッと、まどろみの中にいた意識がいきなり現実に連れ戻されて。

慌てて視線を、声の主へと向ける。





「……あ、俺は佐々木 裕太(ささき ゆうた)」


彼は屈託のない笑みを浮かべ、”一応月華の幹部ね”と付け加えた。




…………目立つ金髪に、耳にとどまらずいくつもつけられたピアス。


そして、緩めにつけているネクタイと、第三ボタンまで開けられたシャツが………彼を、このチームの”不良”だと物語っている。