……男にとって、由良が何者であるのか。
……なぜ、拳銃を下ろしたのか。
その真相を俺が知る由など、この時はまだ、どこにもなかった。
男はもう一度、由良を食い入るように見つめると───次の瞬間には、闇に溶けるようにその場から姿を消していた。
それと同時に、あれほどいた黒服たちも潮が引くように去っていく。
残されたのは、血の匂いと、重たい沈黙。
俺はただ、月明かりの下で立ち尽くすその背中を見つめることしかできなかった。
「蓮さん、橘花さん、だいじょうぶですか……!?」
先ほどまでの張り詰めた静寂を溶かしたのは、どこか心細げで、いつものおどおどとした”由良”の声だった。
あまりの急展開に、俺は地面に膝をついたまま、しばらくボーゼンと固まってしまう。
「いや、お前の方こそ………」
「よかっ、…………」
俺たちの無事を安心するように、弱々しく微笑もうとした彼の唇が、不自然なところで止まる。
「……………由良?」
ぐらりと、由良の体が力なく揺れた。
「────っ、おい!!!!」



