君は、狂愛の檻の中


「はい、油断大敵〜」


ヒュッという風切り音と共に、顔の横スレスレを何かが猛スピードで通り過ぎていった。


「凪(ナギ)……?」


チラリと後ろを見ると、胸にナイフが刺さったガタイのいい男が倒れていて。


…………私たち、狙われていたんだ。


まあきっと、”紘”はそれもわかった上で泳がしていたんだろうけど。


「…………」


無言で”凪”が倒れた男を足で踏みつける。


…………ほんと、バカだなぁ。


一人で考えなしに向かってきて、私たちに勝てるわけないのに。


そんなことを考えながら、私と"紘"は無惨な形に変わっていく敵を冷たい目で見ていた。









「終わったよ」


フッと、目の前に影が落ちた。


少し上を見上げると、私と同じブラウンの瞳がゆっくりと私を映した。


「だいじょうぶ?怪我してない……?」


そっとその瞳を覗いて、再び同じ質問をする。


「うん」


ふわり、と"由良(ユラ)"に抱きしめられる。


さっきとはまた違う、安心する香り。


…………それでも、その体からは微かに血の香りがして。


思わず瞼を伏せる。