君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~




「……お前、転校生なのか?」



私の言葉に、僅かな不信感を抱いたのだろう。

────ピリリとした警戒の混じった声が、静かな屋上に落ちる。



(……急に見知らぬ男が自分の縄張りにいたら、そりゃ警戒もするか)



けれど、これも想定の範囲内。

まずはこの鋭い警戒を、完全に解かなければ。




───ここからは、あざとく、計算高く、徹底的に無害な自分を演じきる時間だ。



私はすぐさま頭を切り替え、次の瞬間には、頼りなくて放っておけないような“キョドり声”を完璧なタイミングで喉から滑り込ませた。



「はっ、はい……っ!つい先週、親の都合で隣町から引っ越してきたんです。僕が元々住んでたところって、すっごく田舎だったんですけど……ここら辺はもう、THE都会って感じで!ビルとかいっぱいあって、びっくりしちゃって……!」


「……イヤ、別にそこまで聞いてねぇんだけど」


───完全に引き気味のツッコミ。


あまりにも空気を読まずにまくし立てる私に、さすがの彼も毒気を抜かれたらしい。


あれほど警戒を宿していた瞳が、次第に呆れを滲ませたものへと変わり、やがて"面倒な奴"を見るような色を帯びていく。





(ここで、さらに憐れみをトッピング……!)