君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~

♦︎ scene1




「……っ、やめ──」





ピチャン、と足元で小さな音が響く。


アスファルトに広がった紅の海に、また一滴、赤い雫が波紋を広げた。








「……コイツが、最後か」



動かぬ肉塊となったスーツ姿の男を、四人の男たちが囲うようにして見下ろす。


見下ろす瞳には、光も、憐れみすらもない。

……あるのはただ、冷徹な闇だけだった。







「それにしても~ほんと、バカだよね」


「……指示されたとは言っても、こんな弱小組織の分際でウチの”姫”を攫うなんてね。」




───男たちは語る。


自分たちの寵愛と人生のすべてを捧げた姫を、奪われたことへの怒りを───




「知らなかったんじゃない?」


ーーーーーーが、どれだけーーを狂愛しているか……。






「絶対に許さない。アイツは、俺たちの”すべて”を───」



「───俺たちの逆鱗に触れたこと、地獄の底で後悔させてやる」





静寂に包まれた空間に、狂気を含んだ残響だけが取り残される。



──ハッと気づいたときには、そこにはもう、誰の姿もなかった。


ほんの数秒前までそこにいたはずの熱量すら、冷たい夜風がすべて掻き消していく。