「知ってるよ。先程、セレスタン国王陛下とフレデリック皇太子殿下との会談に僕も参加したから。バロン帝国が対等な条件で貿易協定を結んでくるなんて不自然だと思ったよ」

オスカーの顔は暗かった。彼が喜んでくれない事に私は少なからずショックを受けた。明日は彼の誕生日だと言うのに、暗い顔はさせたくない。しばらく会えなかった事で寂しい思いをさせてしまったのだろう。

私は彼の薄い唇に軽く唇を合わす。

「そんな子供っぽいキスで誤魔化さないでくれよ」
苛立ったような彼を見るのは初めてだった。
睨みつけている彼は何が不満なのだろう。私はこのアベラルド王国の明るい未来と何より二人が生き残れる道を必死に探ってきた。

「子供っぽい?」
「シェリル、僕は明日には成人する。その誕生日祝いには君を頂戴。もう、気が狂いそうなんだ」
私の首に吸い付いてくる彼を初めて不快に思った。