「突き落とされてなんかいません。わたしが勝手に足を滑らせただけです」
「オレに嘘ついても良いことないぞ」
「ほ、本当です」
じっと探るような目をむけられるけれど、こちらも負けじと見つめ返す。
「もう、そんなに見つめ合っちゃって。路留ちゃんってばこの前は東間くんのこと『ただの知り合い』って必死に言い張ってたのに」
そんな膠着状態になったわたしたちの間に割って入ったのは、いつも通り天使のような笑みを浮かべた、ふんわりと呑気なお姉の声だった。
「まあまあ。お姉ちゃんに彼氏だって紹介するの恥ずかしかったのよ」
それに答えた母さんの言葉にとんでもない単語が含まれていて、反射的に顔を上げた。
「彼っ……!? ちょ、え、違……」
「ミチルの希望で学校でも隠してんですよ。でも照れ性なところもわかってるんで安心してください」



