「会長っ」
「思い返してみれば、一番最初に生徒会長を目指した理由は、母親だった」
彼はわたしの方に目を向けるでもなく、独り言のように言った。
「オレが中学の頃、母親は自分のことを『一人息子を優秀な人間に育て上げたシングルマザー』に見せかけようとしていた。今の旦那の気を引くためにな。でも残念ながらオレは昔から成績はあんま良くなかったから、せめて生徒会長にでもなれって言われた」
淡々と、まるで無感情な言い方。
だけどその中には確かに、寂しさのような感情がにじんでいる。
「母親から愛されることなんてとうの昔に諦めていたはずなのに、心のどこかで期待が捨てられなかったんだろうな。言われた通りに立候補して、当選した。そしたら、一切オレに興味なかったのに、そのときだけすげー褒められたんだよ。それが忘れられなくて、あれからずっと生徒会長を続けてきた」
大きく息を吐いて、会長は私に視線を向けた。



