桃先輩はわしゃわしゃとわたしの頭を雑に撫でる。
「で、敬人との賭けの話は? あんたにとっての本題はこれからなんと違うん?」
「あ、そ、そうです! どうしよ、会長、生徒会室にいるかな……」
タイミングよく社会科準備室の扉が開いた音がした。
「敬人なら中庭にいるよ」
振り返れば、木坂先輩が顔をのぞかせていた。
負けて悔しそうにするでもなく、いつも通りの穏やかな笑みを浮かべている。
「ごめん、声が聞こえたから。おめでとう原さん」
「あ、ありがとうございます」
「行っておいで、敬人のところ」
「せや、はよ行ってこい」
「は、はいっ!」
桃先輩と木坂先輩に背中を押され、わたしは社会科準備室を出る。
わたしは中庭を目指して、最短ルートの廊下を走り出す。
生徒会長に当選して早々校則違反。でも今日は目を瞑ってほしい。
おかげで、中庭につく頃にはまともに声が出ないぐらい息が切れていた。
彼は、ベンチで一人空を見上げていた。
わたしは深く息を吸って呼びかける。



