『選挙で負けた方は勝った方の言う事を何でも一つ聞く、というのはいかがでしょう』
その文言に、数ヶ月前のことを思い出さないはずがなかった。
路留をどうにか自分のものにしようと無茶を言ったあの日のことを。
正直彼女がこの賭けで何を敬人に求めたいのかわからない。
まあ恐らく、二度と自分に関わるなとか、そういうことを言ってくるのだろう。
戸惑ったのは、勝負の内容があまりに敬人に有利だったから。
入学してから既に4回生徒会長に選ばれている敬人が、お世辞にも目立つのが得意とはいえない路留に負けるはずがない。
賭けに勝って、例えば婚姻届でも書かせたら。それかもっとシンプルに「一生オレのものでいろ」と命じたら。
路留を自分のもとに縛り付けておけるではないかと。この賭けを受けない手はないと。
そんな考えが浮かんだ瞬間、思わず落胆した。
お気に入りを手放すことはできないということ、証明したかったのと逆のことをあっさり自分に証明してしまった。



