『自分のものにできれば相手の気持ちなんてどうでもいい……って思ってる』
あの日駿に言われた言葉には、敬人と付き合っていても路留は幸せではないのではないか、という気持がこもっていた。
否定できなかった。自覚があったからだ。
自分は多分、気に入ったものの手放し方を知らない。
気に入ったものにとことん執着し、自分のものにしようと囲い込んで、結果ダメにしてしまうのではないか。
これまでも時々考えたことだ。
例えば、三番目の父親である三上秋螺。
血の繋がりも書類上の繋がりもない、かつて母親と結婚していただけの赤の他人。
しかし今でも連絡をとり続け、頻繁に家に出入りし、繋がりを保とうと必死になっている。
秋螺のことを思うのなら、本来そんなことをするべきではない。二度と会うことなく彼の記憶から消えるのが正しい。
そうすれば秋螺は、再婚して新しい家族をつくるとかして新しい人生を歩み始めるだろう。
今そうしていないのは、かつて家族だった敬人が近くにいるせいだ。新しい家族をつくれば、敬人を捨てるような罪悪感は芽生えてしまうから。秋螺はそういう男だ。



