もしモデルにスカウトなんてされていなかったら。もっと勉強が好きだったら。おしゃれに興味がなかったら。自分は平凡な女の子になっていた可能性はある。
そう思えた瞬間、一気に演じやすくなったらしい。
『あくまで私はそうだったってだけだから、路留ちゃんにもこの方法が合うかはわからないけど』
そう言われたけれど、そのやり方はちゃんとわたしにも合っていた。さすが姉妹というだけある。
わたしがこれから演じるのは、”人前でもまっすぐ前を見て堂々と話せる人間”だ。
どのような環境にいたら、わたしはそんな人間になれただろうかと想像してみる。
……そう、例えば、眼鏡を掛けていなかったら。
この重い眼鏡がなかったら、もう少しうつむく回数が少なかったのではないだろうか。
わたしを守ってくれるこの相棒がいなかったら、もっとダイレクトに外の世界に晒されて、もう少し強くなっていたかもしれない。



