「そういう桃先輩はどうなんですか?」
「うちを誰やと思っとるん?」
「愚問でした」
緊張のきの字も知らなさそう。うらやましい。
メモをしまって三十一回目の「人」を手のひらに書いたとき、2人分の足音が聞こえてきた。
「あ」
今回の生徒会選挙最有力候補。
現生徒会長&副会長コンビ。他の候補者たちの空気が少し固くなったのがわかる。
会長とは一瞬だけ目が合ったけれど、つい逸らしてしまった。
久しぶりに顔を見られて正直ちょっと嬉しいけれど、どんな顔をして良いものかわからない。
「お疲れ、敬人、木坂くん。お互い頑張ろな」
桃先輩がそんな風に声を掛ければ、木坂先輩だけが少し微笑んで手を振ってくれた。
「では、準備が整ったので一番目の候補者からお願いします」
演説会場を取り仕切る放送部の女子生徒が言ったのを合図に、候補者のペアが立ち上がった。
今回、候補者はわたしたちを含めて5組。



