「じゃ、行くか」
短く息をつき、会長はゆっくり歩き出した。
──来たときはあんなに怖かった歓楽街の大通り。
誰かと一緒にいるというだけで安心感が段違いだ。
誰かと……というか、この街に慣れ親しんだこの人だから、なのかもしれない。
「へへへ」
「何笑ってんだ?」
「素敵な人でしたね、アキラさん」
「まーな」
会長はまるで自分が褒められたかのように、得意げに笑った。
三番目のお父さんは、会長にとって本当に特別な大切な人なのだろう。
アキラさんを通して東間敬人という人間の一端に触れられた気がしてちょっと嬉しい。
この人は、聞けば教えてくれるけれど、自らのことを進んで教えてくれることはあまりない。最近そう気が付いた。
「前から気になってたんだけどさ」
「あ、はい。何でしょう」
ゆったりとした速度で歩きながら、会長はそこそこ真剣な声で言った。
「何で頑なに『会長』呼びなんだ?」
「え? どういうことですか?」



