「すみません、わたしそろそろ帰ります」
「あれ、もう? 敬人、送ってあげて」
「言われなくても」
遠慮しようとしたけれど、ここがあまり治安のよろしくない街だということを思い出して、素直にお願いすることにした。
アキラさんはタバコを取り出しながら、わたしたちを階段の前まで見送る。
「またいつでもおいで、ミチルちゃん。敬人と仲良くしてやってよ」
「は、はいっ」
「もしコイツが避妊せずにヤろうとしてきたら遠慮なく蹴り上げてやりな」
「ん゙んっ、え、いや、あの、わたしたちそこまでの関係では全然なく……!」
思いがけない言葉に慌てふためいてしまったけれど、冷静に考えたらからかわれているだけなのだろう。
そう気付いて顔を熱くしながらうつむいた。
「何の心配だよ。オレが好きな女のこと傷つける真似するわけねーだろ」
「ま、それもそうか」
会長の言葉でその話題は終わり、アキラさんは微笑んで手を振り、扉の向こうへと戻っていった。



