「まあマナミさん──敬人の母親にとっては、俺と夫婦だった二年間なんて黒歴史でしかないだろうけどな。俺たちがこうしていまだに交流してるなんて、絶対知らねぇだろあの人」
「だな。そもそもあの女、オレに対して部屋の隅のホコリほどの興味もねーし。旦那の前ではちゃんと教育してるフリしてるけど」
「だろうねぇ」
「ま、その旦那も興味があるのは『散々苦労しながらも今までどうにかこうにか子どもを育てた幸の薄い女』だけで、その子どもであるオレとはまっすぐ目を合わせたことさえねーし」
「今の旦那も思いっきりマナミさんの描いたストーリーにはまっちゃってるわけね。相変わらず魔性の女だぜ。怖い怖い」
「ちなみに二人ともコレにはまだ気付いてねーぞ」
会長は「コレ」と言うときにTシャツの襟を引っ張って、首元に入ったタトゥーに触れる。
アキラさんはそれを見て呆れたように笑った。



