雑然とした部屋に、人影が一つ。
「おう、遅かったじゃねぇか敬人」
タバコを片手に窓際に座っていたその人は、会長の声でどこか楽しそうに振り返った。
その顔を見て、わたしは思わず息を止める。
年齢は30歳前後といったところか。
男性にしては長い、赤っぽい色の髪を後ろで束ね、目には色の薄めのサングラス。
細身だが鍛えられていることがよくわかる筋肉質な腕には……びっしりとタトゥーが入れられている。
だけどそれ以上に印象的なのは、顔半分に大きく入った方のタトゥーだった。
赤色をベースに、絡まる茨のような黒い模様。
そこはかとなく危険な香りがするのに、整った顔に浮かぶ笑顔は優しく、不思議と怖い印象はない。
じろじろ見るのは失礼だと思いながらも、目が釘付けになってしまう。
そうするうちに、男性は会長の後ろに気配を消して立っているわたしに気付いたようだった。



