「で、二番目の兄のことで反省した両親は、三男の僕には何も求めない方針にしたみたいでね。跡継ぎにはもう一番目の兄がいたってのもあるだろうけど」
最低限恥ずかしくない振る舞いをしてくれれば、あとは何も求めない。医者になる必要もない。成績もそれなりでいい。お前の好きなことをしろ。
そんな風に言われて育った。
「だけどなんかこう、退屈だったんだよね。誰にも期待されない気楽な立場だけど、特に好きなことも得意なことも見つけられなくて、毎日何の刺激もなかった。それなら兄たちみたいに『親の期待に応えないと』って躍起になって勉強に打ち込んでるほうがまだ良かったんじゃないかとさえ思った」
──そんなときだったよ、敬人と出会ったのは。
これまで静かに話していた木坂先輩のトーンが、少しだけ上がるのがわかった。
「中2のときたまたまクラスが同じで、くじ引きで決めた席替えでたまたま隣になったんだ。まだ刺青は入ってなかったけど、それでもちょっとヤバそうな奴だなとは思ったな」
「ヤバそうだったんですか?」
「うん。今と同じで見るからに不良って感じじゃないけど、二番目の兄がつるんでたような連中に近い空気感があったからね。正直あんまり関わりたくないなーって」



