「そんなときに声を掛けてくれたのが隣のクラスの敬人やった」
別にいじめてきた奴らから身を挺して守ってくれたとか、そういうのではないけど。
桃先輩はそう言って懐かしむように目を細める。
下校途中、近所の公園のベンチで堪えきれずに泣いていた桃先輩の隣に座って、ただ話を聞いてくれた。ただそれだけだったのだという。
その様子は、わたしにも大いに想像できた。
「何だか……すごく会長っぽいですね」
「やろ? 別にあいつが何かしたとかいうわけやないんやけど、何故かすっごい元気が出てな」
「それがきっかけで、その……会長のことを好きに?」
「うん」
大きくうなずいた桃先輩は、温かいココアのペットボトルを開ける。
ふわり香る甘いチョコレートが、まるで当時の桃先輩の気持ちを表現しているようだった。
「そこからは執念やったわ。必死に自分磨きして、どうにかあいつに釣り合う外見になった。中学は離れたけど、連絡だけは絶対に途絶えさせたるもんかと思って何気ないメッセージを送り続けた」



