「それにしたって非通知でかけるのは変じゃねーか? 『怪我人を見つけたから人を呼ぶ』っていう正しいことをしているのに、わざわざ自分の正体を隠すなんて、何かやましいことがあるみたいだ」
「奥ゆかしい人やっただけかもしれん。それか面倒事に巻き込まれたくないって思ったか」
桃は相変わらず歪んだ笑みを浮かべたまま、敬人の手をつかんで自分の顔から引きはがした。
「てか仮にあの子が本当に誰かに突き落とされたんやとしても、それがうちとは限らんやろ?」
「……電話を取った先生はこうも言っていた。『電話の声は女子で、少し変なイントネーションでしゃべっていた』と」
「っ……」
「普段は使わない標準語を無理やり使った結果だな」
「ほ、他にもそういうしゃべり方のやつ、探したら学校に一人ぐらいおる……かも」
「まあな。でも知ってるか? そもそもミチルはクラスメイトにすらまともに認知されてないレベルで交友関係が狭いんだよ。逆に言えば、怨みを買うほどの相手も限られている」



