うちの生徒会長は今日も読めない






東間敬人は、昔から一度気に入ったものへの執着は異常なほど強かった。


手になじんだ文房具はどれだけ傷が付いても使い続けたし、清涼飲料水はもう何年も無糖のミルクカフェオレ以外を購入した記憶がない。


──逆にそうでないものに対しては、どこまでも情が湧かない。相手がどれだけ自分を慕っている人間だったとしても。




「敬人っ!」




文化祭二日目も中盤に差し掛かり、来場者も次第に増えてきて一層の盛り上がりを見せていた。


しかしながら模擬店や展示がない特別教室棟は、いつも通りかむしろそれ以上に静かだ。

そんな静けさの中、敬人は馴染みの声が聞こえて顔を上げた。




「よう。やっと来たか」


「どうしたん? 話って何? よりによってこの一番忙しいときに……」




小走りで敬人の方へやって来たのは、パッチリした目と毛先を跳ねさせたボブカットが印象的な女子生徒。


生徒会書記・姫城桃。

かつてはコンプレックスだったらしい関西訛りの言葉遣いは、今や本人もアイデンティティとして捉えているようだ。