「本の中で普通の人を見るのは初めてだよな。話したりはできなさそうだけど」

カズの言葉に僕たちは頷く。メルとメルキュールが反応しないってことは、この人たちは物の怪の変身した姿とかじゃないってことだし。

「魔法演習?この本の世界にも魔法があるんだね。現実世界では聞いたことないけど」

リオンが男子生徒たちを見つめながら言う。僕の胸には、モヤモヤとしたものがあった。何だろう。僕は、この物語を執筆していない。でも、この物語を知っているようなーーー。

「ねぇ、ノワール。僕と君はこの物語を知ってるんじゃないかな?」

ノルに話しかけられ、顔を上げる。ノルも僕と同じ違和感を覚えているみたいだ。でもこの物語をいつ読んだのか、誰が書いたのか、思い出せない。

「違和感はあるけど、全然何も思い出せない」

「僕も同じ」

首を傾げる僕たちに対し、エリーさんとシャルロットさんが話しかけてきた。

「とりあえず、教室の外に出ましょう!」

「教室の外の景色を見れば、何かわかるかもしれません」