「あなたたちは……?」

多々良先輩は首を傾げる。そうだよね。僕たちは前世と顔が変わってしまってるから……。

少し寂しさが込み上げる。でもそれを飲み込んで、僕とノルは笑いかけた。そして、多々良先輩にあのノートを見せる。

「この小説、とても面白かったです!」

「あなたの小説をもっと読んでみたい!」

僕とノルの言葉に、多々良先輩は一瞬瞳を輝かせたものの、その光は消えてしまう。多々良先輩は暗い顔をしながら俯いた。

「無理よ。私には才能がない。小説を書く資格なんて、もうない。……夢なんて叶わない」

「そんなことないです!!」

僕たちの口からすぐに否定の言葉が飛び出る。

「好きなことをするのに、才能があるとかないとか関係ないです!」

「あなたの小説は読んでいてわくわくします!とても面白い小説です!」

多々良先輩の瞳から涙が零れ落ちる。何度も「ありがとう」という声が聞こえた。

(僕らの言葉がどれだけ多々良先輩の胸に響いているかわからないけど、少しでも心が軽くなっていたらいいな……)