夜を照らすmagic

「ノワール!ノル!」

リオンとリオがどこか焦った様子で声をかける。不用意に近付くなと言いたいんだろう。僕とノルは二人に笑いかけた。

「大丈夫だよ」

「少し話しかけてみる」

僕とノルは顔を見合わせ、ゆっくりと頷く。舞台に向かって歩き出す。一歩を踏み出すたびに緊張が増していく。この空気は何だろう。この人は誰?

「あの……」

ノルが舞台に立ち、女性に声をかける。女性がゆっくりと顔を上げた。女性の顔が露わになる。未だに涙を流しているその両目は赤く血走り、顔色は真っ青を通り越して土気色になっている。でもーーー。

(この人を、僕は知ってる!)

この小説が何か、この人は知っているかもしれない。僕は女性に近付き、話しかけた。

「大丈夫ですか?ここは寒いですし、講堂の外に出ましょうーーー」

話している途中で女性が泣き声を上げる。女性は髪を掻きむしり、「何で!!どうして!!」と叫んでいた。

「ノワール!ノル!舞台から離れて!」