「ねぇ……！ねぇ……！起きて……！」

どこかで聞いたことがある声、そして体が揺さぶられたことで僕ーーーノワールは沈んでいた意識が浮上していくのを感じる。誰？男性の声だ。でもこの声は、リオンやメルのものじゃない。

ゆっくりと目を開けた時、僕は目の前にある光景が信じられなかった。僕の目の前にいたのは、僕自身だった。同じ姿、同じ服装、鏡を見ているみたいだ。でも目の前に鏡はない。

（もしかして、物の怪！？）

僕が杖を出そうとすると、その手を強く掴まれた。目の前にいる僕は困ったような顔をしている。

「僕も最初、物の怪の仕業かと思ったんだ。でも周りを見てよ」

そういえば、僕は目の前にいる僕しか見えていなかった。体を起こし、周りを見て驚く。僕たちは学校の教室にいた。前世で通った日本の学校じゃない。ヨーロッパの学校っぽい教室だ。そして、その教室の床にはーーー。

「みんな！」

リオン、メル、エリカさん、カズ、シャルロットさんが倒れている。そしてそのそばには、僕のようにそっくりさんが倒れていた。