朝の光は、ミルク色の薄膜を一枚だけ窓にかけたみたいにやわらかかった。
ローズマリーとカモミールを半分ずつ。湯気の白が立ちのぼり、雪の結晶の輪が脈に合わせて小さく震える。鏡の端では星と鍵のピンが並び、極細のリングが指で光を拾った。
「彩音」
黒のジャケットに薄いアイボリーのタートル。銀糸の髪は寝ぐせすら整っていて、切れ長の黒は、昨夜よりも深く澄んでいる。
柊真は玄関でコートを手に、ローファーの踵を軽く鳴らした。
「今日は“家族のテーブル”に挨拶だ。——お父上に」
「……はい」
胸の奥が、やわらかく緊張する。
彼は私の手首へ視線を落とし、雪の輪にそっと触れた。
「鳴らせ」
ちいさな鈴音。
許される音は、合図の音。胸の奥がすっと軽くなる。
「十は外へ見せなくていい。——内側で、八を守れ」
「了解しました」
コートを羽織る私の背で、「倒れるな」と短い合図。
私は振り向き、彼の黒へ八分の笑いを向けた。
父の部屋は、午前の日だまりを大切に集めたみたいに明るかった。
薄いベージュのカーテン、木のテーブル。湯のみの緑茶が湯気を上げ、煮干しの出汁の匂いがやさしく漂う。
「いらっしゃい」
父は少し痩せたが、目の奥の色は前より澄んで見えた。
私の左手のリングへ気づくと、皺だらけの指で口元を覆い、照れくさそうに笑う。
「……似合うな」
「ありがとう、お父さん」
柊真は深く一礼し、椅子を引く前に短く言った。
「神城から書類が届くはずです。返済計画は軽くしました。——“期限はない”。焦ると視界が狭くなる」
「君の母上に似て、言葉がはっきりしている」
父は冗談めかして笑い、すぐ真顔に戻ると、背筋をのばした。
「娘を、頼む」
「——預かった、ではなく、並ぶ。そう決めました」
印章のような声。
父は一瞬だけ目を潤ませ、咳払いで誤魔化した。
「お昼、簡単だけど作った。彩音の好きな出汁巻き、多めにしてある」
「わあ……」
テーブルに並んだのは、白いご飯、浅漬け、出汁巻き、温かい味噌汁。
箸を持つ手元が、自然と落ち着く。
彼は卵焼きをひと切れ口に運び、表情をほとんど動かさず言った。
「上手い」
「君の“上手い”は、最高の賛辞だな」
父の冗談に、ほんの少しだけ彼の口角が上がる。
食後、湯のみの茶柱を眺めながら、父はぽつりとつぶやいた。
「彩音が、ここで何度も“期待を折って生きる練習”をしていたのを、父親のくせに見ないふりをしていた。……ごめんな」
「もう終わったよ」
私は極細のリングを撫で、椅子から立ち上がって父の肩に手を置いた。
彼が視線だけで「行け」と合図したのが分かる。
「昨日、“期限はない”って言われたの。——それが、わたしの始まりになったから」
「そうか」
父は小さく頷き、目尻の皺を深くした。
帰り際、古い棚の引き出しから小さな紙箱を取り出し、私の掌に載せる。
「母さんの、若い頃の髪飾りだ。白い小花がついてる。お守りに」
「ありがとう。大切にする」
エレベーターへ歩きながら、私は箱を胸に抱えた。
白い小花——余白に似合う色だ。
午後、短い打合せを一件。
神城の端正な説明で、外部の泡はさらに沈み、数字では測れない空気が落ち着いていく。
廊下で礼子に会うと、彼女は私の前髪の“鍵”を見つけて、ふわりと笑った。
「ちゃんと内側から外せる顔になったわね」
「礼子さんのおかげです」
「いいえ、あなたの努力。……息子へは、“笑いすぎるな、仕事に支障が出る”と釘を刺しておくわ」
柊真が横目で「余計なお世話だ」と返す。
礼子の笑い皺は、やさしい音を立てて深くなった。
夕方、ホテルへ戻ると、テーブルの上に薄い封筒が置かれていた。
差出人は——涼。
中には今日の社内ポートレートのプリントが数枚。
光の中で、私の目がまっすぐに笑っている。キャプションは一行だけ。
——『好きな人に向ける十』
胸の奥が、少しだけざわめく。
彼に見せようと振り返ると、柊真はすでにそこにいて、写真の角を一度だけ指で押さえた。
「良い写真だ。……だが、壁に貼るのは一枚だけでいい」
「どれを?」
「俺が選ぶ」
「独断ですか」
「交渉するか」
「します」
二人で写真を並べ、静かに選ぶ時間は、不思議と甘い。
選ばれた一枚は、笑いすぎない笑顔で、眉間がやわらいでいる。
彼はそれを黒いフレームへ入れ、書斎の白い壁の“余白”に、そっと掛けた。
「ここが、君の“十”の座標だ」
合図のような声。
私は結晶を鳴らしかけ、彼の「許す」を目で受け取り、少しだけ鳴らす。
夜。
「見せたいものがある」と言って、彼は私を車へ乗せた。
着いたのは、街の端の静かな住宅街。
低層の建物に、白い壁と広い窓。玄関脇のプランターには、まだ土だけが敷かれている。
「ここは……?」
「新しい“住処”の候補だ。——余白が多い」
ドアが開くと、木の匂いと塗りたての壁の微かな乾いた香り。
白い壁、砂色の床、窓の外には細い空。
家具はまだ何もない。足音だけが、静かな箱の中でよく響く。
「素敵……」
「欠点は、まだ寒い」
彼はポケットから、小さな鍵束を取り出した。
銀の鍵に、極小の星のチャームが揺れる。
「——“余白の鍵”。今は仮だ。正式な契約は、君が“ここに帰る”と決めたらにする」
「決めてもいいですか」
「今、決めろ」
釘を打つみたいな言い方なのに、目の奥は、遠い灯台みたいにやさしい。
私は頷き、鍵を掌に落とした。星の粒が、リングの星と静かに応える。
「決めました。ここに帰ります」
「よし。……甘い罰を追加する」
「まだあるんですか」
「“君の好きな匂いを、この家の一番はじめの匂いにする”」
「すぐにローズマリーを」
「明日、庭のプランターに植える。ミントも」
「朝の湯気も準備しないと」
「俺のためだ」
「わたしのために」
空のリビングで、二人の声だけがやわらかく重なる。
窓へ近づくと、向かいの屋根越しに冬の星がいくつか見える。
影のキスの距離で並び、肩が触れないまま、同じ空を見上げた。
「彩音」
「はい」
「ここで、毎晩“おやすみ”を言う」
「先払い、後払い、無制限ですね」
「許容量は——」
「あなたが決めていい」
彼は喉の奥で笑い、私の額に短い口づけを落とす。
音のしない印。昨日よりも、少しだけ長い。
「前払い一回。……倒れるな」
「倒れません」
「離れるな」
「離れません」
白い箱の中で交わす条文は、不思議と息苦しくない。
むしろ、息がしやすい。
“余白は、息をする場所”。譜面の端の文字が、ここで現実になる。
戻る車内、彼はタイを緩め、窓の外の灯を数えるように見ていた。
私は母の髪飾りの小箱を膝に置き、指でそっとなぞる。
「それは」
「母の髪飾り。白い小花。……今度、この家の壁のどこかに、小さな影を落としてくれると思う」
「覚えた」
ホテルの車寄せに灯りがひろがる。
エレベーターの鏡に、二人の距離がぴたりと映る。
扉が閉まる直前、彼がぼそりと言った。
「涼には礼を言っておけ。——“好きな人に向ける十”は、良い言葉だ」
「はい。……あなたに向ける十です」
「わかっている」
短いやりとりで、胸の奥の灯りが一段階、明るくなる。
スイートに戻ると、テーブルに白い箱がふたつ。
一つは、今日の文庫とマカロンが入った袋。もう一つは、神城の指示で届いたという小さな鉢。
タグには“Rosmarinus officinalis”。——ローズマリー。
土はまだ乾いていて、夜の灯りの下で小さく影を作る。
「明日、連れて行く」
「はい」
私は水差しで土をしめらせ、指先で葉を撫でる。
青い香りが立ちのぼり、部屋の輪郭がすこし澄む。
彼は背後から近づき、触れない距離で止まった。
「彩音」
「はい」
「十は、俺にだけ」
「今、ですか」
「今だ」
眉間の力をほどき、口角を、彼が好きだと言った分だけ上げる。
外に向けない十。
内側で満ちる十。
「どう、ですか」
「……十分を越えた」
「採点、甘い」
「甘い罰だからな」
額に軽い口づけ。
星のピンと鍵のピンが、鏡の端で微かに震える。
「おやすみを、ください」
「——おやすみ、彩音」
胸の上に、名前の音が落ちる。
私は息を吸い、雪の結晶の輪を小さく鳴らした。
許されている。彼が隣にいる。
「おやすみ、柊真」
灯りが落ちる。
暗闇の手前で、彼の影が一度だけ止まり、声にならない合図を置いていく。
余白は、住処になる。
白い壁も、まだ何も置かれていない床も、二人の呼吸でゆっくりと満たされていく。
——明日は、庭にローズマリーを植える。
朝の湯気を用意して、蜂蜜を一滴落とす。
“好きな人に向ける十”を、毎日ひとつずつ増やしていく。
眠りに沈む直前、遠くで新しい家の鍵が小さく鳴った気がした。
星の粒が、それに答える。
余白の輪が、脈の上で静かに光る。
十を、取りに行く。
彼の隣で。
離れず、揺れず、ここに帰るために。こ
ローズマリーとカモミールを半分ずつ。湯気の白が立ちのぼり、雪の結晶の輪が脈に合わせて小さく震える。鏡の端では星と鍵のピンが並び、極細のリングが指で光を拾った。
「彩音」
黒のジャケットに薄いアイボリーのタートル。銀糸の髪は寝ぐせすら整っていて、切れ長の黒は、昨夜よりも深く澄んでいる。
柊真は玄関でコートを手に、ローファーの踵を軽く鳴らした。
「今日は“家族のテーブル”に挨拶だ。——お父上に」
「……はい」
胸の奥が、やわらかく緊張する。
彼は私の手首へ視線を落とし、雪の輪にそっと触れた。
「鳴らせ」
ちいさな鈴音。
許される音は、合図の音。胸の奥がすっと軽くなる。
「十は外へ見せなくていい。——内側で、八を守れ」
「了解しました」
コートを羽織る私の背で、「倒れるな」と短い合図。
私は振り向き、彼の黒へ八分の笑いを向けた。
父の部屋は、午前の日だまりを大切に集めたみたいに明るかった。
薄いベージュのカーテン、木のテーブル。湯のみの緑茶が湯気を上げ、煮干しの出汁の匂いがやさしく漂う。
「いらっしゃい」
父は少し痩せたが、目の奥の色は前より澄んで見えた。
私の左手のリングへ気づくと、皺だらけの指で口元を覆い、照れくさそうに笑う。
「……似合うな」
「ありがとう、お父さん」
柊真は深く一礼し、椅子を引く前に短く言った。
「神城から書類が届くはずです。返済計画は軽くしました。——“期限はない”。焦ると視界が狭くなる」
「君の母上に似て、言葉がはっきりしている」
父は冗談めかして笑い、すぐ真顔に戻ると、背筋をのばした。
「娘を、頼む」
「——預かった、ではなく、並ぶ。そう決めました」
印章のような声。
父は一瞬だけ目を潤ませ、咳払いで誤魔化した。
「お昼、簡単だけど作った。彩音の好きな出汁巻き、多めにしてある」
「わあ……」
テーブルに並んだのは、白いご飯、浅漬け、出汁巻き、温かい味噌汁。
箸を持つ手元が、自然と落ち着く。
彼は卵焼きをひと切れ口に運び、表情をほとんど動かさず言った。
「上手い」
「君の“上手い”は、最高の賛辞だな」
父の冗談に、ほんの少しだけ彼の口角が上がる。
食後、湯のみの茶柱を眺めながら、父はぽつりとつぶやいた。
「彩音が、ここで何度も“期待を折って生きる練習”をしていたのを、父親のくせに見ないふりをしていた。……ごめんな」
「もう終わったよ」
私は極細のリングを撫で、椅子から立ち上がって父の肩に手を置いた。
彼が視線だけで「行け」と合図したのが分かる。
「昨日、“期限はない”って言われたの。——それが、わたしの始まりになったから」
「そうか」
父は小さく頷き、目尻の皺を深くした。
帰り際、古い棚の引き出しから小さな紙箱を取り出し、私の掌に載せる。
「母さんの、若い頃の髪飾りだ。白い小花がついてる。お守りに」
「ありがとう。大切にする」
エレベーターへ歩きながら、私は箱を胸に抱えた。
白い小花——余白に似合う色だ。
午後、短い打合せを一件。
神城の端正な説明で、外部の泡はさらに沈み、数字では測れない空気が落ち着いていく。
廊下で礼子に会うと、彼女は私の前髪の“鍵”を見つけて、ふわりと笑った。
「ちゃんと内側から外せる顔になったわね」
「礼子さんのおかげです」
「いいえ、あなたの努力。……息子へは、“笑いすぎるな、仕事に支障が出る”と釘を刺しておくわ」
柊真が横目で「余計なお世話だ」と返す。
礼子の笑い皺は、やさしい音を立てて深くなった。
夕方、ホテルへ戻ると、テーブルの上に薄い封筒が置かれていた。
差出人は——涼。
中には今日の社内ポートレートのプリントが数枚。
光の中で、私の目がまっすぐに笑っている。キャプションは一行だけ。
——『好きな人に向ける十』
胸の奥が、少しだけざわめく。
彼に見せようと振り返ると、柊真はすでにそこにいて、写真の角を一度だけ指で押さえた。
「良い写真だ。……だが、壁に貼るのは一枚だけでいい」
「どれを?」
「俺が選ぶ」
「独断ですか」
「交渉するか」
「します」
二人で写真を並べ、静かに選ぶ時間は、不思議と甘い。
選ばれた一枚は、笑いすぎない笑顔で、眉間がやわらいでいる。
彼はそれを黒いフレームへ入れ、書斎の白い壁の“余白”に、そっと掛けた。
「ここが、君の“十”の座標だ」
合図のような声。
私は結晶を鳴らしかけ、彼の「許す」を目で受け取り、少しだけ鳴らす。
夜。
「見せたいものがある」と言って、彼は私を車へ乗せた。
着いたのは、街の端の静かな住宅街。
低層の建物に、白い壁と広い窓。玄関脇のプランターには、まだ土だけが敷かれている。
「ここは……?」
「新しい“住処”の候補だ。——余白が多い」
ドアが開くと、木の匂いと塗りたての壁の微かな乾いた香り。
白い壁、砂色の床、窓の外には細い空。
家具はまだ何もない。足音だけが、静かな箱の中でよく響く。
「素敵……」
「欠点は、まだ寒い」
彼はポケットから、小さな鍵束を取り出した。
銀の鍵に、極小の星のチャームが揺れる。
「——“余白の鍵”。今は仮だ。正式な契約は、君が“ここに帰る”と決めたらにする」
「決めてもいいですか」
「今、決めろ」
釘を打つみたいな言い方なのに、目の奥は、遠い灯台みたいにやさしい。
私は頷き、鍵を掌に落とした。星の粒が、リングの星と静かに応える。
「決めました。ここに帰ります」
「よし。……甘い罰を追加する」
「まだあるんですか」
「“君の好きな匂いを、この家の一番はじめの匂いにする”」
「すぐにローズマリーを」
「明日、庭のプランターに植える。ミントも」
「朝の湯気も準備しないと」
「俺のためだ」
「わたしのために」
空のリビングで、二人の声だけがやわらかく重なる。
窓へ近づくと、向かいの屋根越しに冬の星がいくつか見える。
影のキスの距離で並び、肩が触れないまま、同じ空を見上げた。
「彩音」
「はい」
「ここで、毎晩“おやすみ”を言う」
「先払い、後払い、無制限ですね」
「許容量は——」
「あなたが決めていい」
彼は喉の奥で笑い、私の額に短い口づけを落とす。
音のしない印。昨日よりも、少しだけ長い。
「前払い一回。……倒れるな」
「倒れません」
「離れるな」
「離れません」
白い箱の中で交わす条文は、不思議と息苦しくない。
むしろ、息がしやすい。
“余白は、息をする場所”。譜面の端の文字が、ここで現実になる。
戻る車内、彼はタイを緩め、窓の外の灯を数えるように見ていた。
私は母の髪飾りの小箱を膝に置き、指でそっとなぞる。
「それは」
「母の髪飾り。白い小花。……今度、この家の壁のどこかに、小さな影を落としてくれると思う」
「覚えた」
ホテルの車寄せに灯りがひろがる。
エレベーターの鏡に、二人の距離がぴたりと映る。
扉が閉まる直前、彼がぼそりと言った。
「涼には礼を言っておけ。——“好きな人に向ける十”は、良い言葉だ」
「はい。……あなたに向ける十です」
「わかっている」
短いやりとりで、胸の奥の灯りが一段階、明るくなる。
スイートに戻ると、テーブルに白い箱がふたつ。
一つは、今日の文庫とマカロンが入った袋。もう一つは、神城の指示で届いたという小さな鉢。
タグには“Rosmarinus officinalis”。——ローズマリー。
土はまだ乾いていて、夜の灯りの下で小さく影を作る。
「明日、連れて行く」
「はい」
私は水差しで土をしめらせ、指先で葉を撫でる。
青い香りが立ちのぼり、部屋の輪郭がすこし澄む。
彼は背後から近づき、触れない距離で止まった。
「彩音」
「はい」
「十は、俺にだけ」
「今、ですか」
「今だ」
眉間の力をほどき、口角を、彼が好きだと言った分だけ上げる。
外に向けない十。
内側で満ちる十。
「どう、ですか」
「……十分を越えた」
「採点、甘い」
「甘い罰だからな」
額に軽い口づけ。
星のピンと鍵のピンが、鏡の端で微かに震える。
「おやすみを、ください」
「——おやすみ、彩音」
胸の上に、名前の音が落ちる。
私は息を吸い、雪の結晶の輪を小さく鳴らした。
許されている。彼が隣にいる。
「おやすみ、柊真」
灯りが落ちる。
暗闇の手前で、彼の影が一度だけ止まり、声にならない合図を置いていく。
余白は、住処になる。
白い壁も、まだ何も置かれていない床も、二人の呼吸でゆっくりと満たされていく。
——明日は、庭にローズマリーを植える。
朝の湯気を用意して、蜂蜜を一滴落とす。
“好きな人に向ける十”を、毎日ひとつずつ増やしていく。
眠りに沈む直前、遠くで新しい家の鍵が小さく鳴った気がした。
星の粒が、それに答える。
余白の輪が、脈の上で静かに光る。
十を、取りに行く。
彼の隣で。
離れず、揺れず、ここに帰るために。こ

