ぜんぶ、ちょうだい。




はあ、と小さくため息をつきながら、泉先輩がこちらに近づいてくる。

ただ歩いてきているだけなのに、なぜか私まで背筋が伸びて、心臓が落ち着かない。



「なんか言いたいことあるなら、俺に直接言えば?」



低い声。

さっきよりも、少しだけ強くなった気がした。



「こいつに関わるの、やめて」



そう言って、泉先輩は私の隣に立ち、ポン、と何気ない動作で私の頭に大きな手を置いた。


……え。


体温がじわっと伝わってきて、頭がうまく働かなくなる。


そっか。

先輩、私がいじめられてるって、思ったんだ。


助けに……来てくれたんだ。


……そっか。


そう思った瞬間、胸の奥が、きゅっと縮んだ。



「か、かお……私たち、そういうつもりじゃなくてっ」

「は?」



泉先輩の声は、低くて、鋭かった。

それだけで空気が一段階冷えて、先輩たちは一気に青ざめる。


一人は、もう本気で泣きそうな顔をしていた。