〇学校/2階の教室
凛真モノローグ『佐野凛真(さのりま)、高校1年生』
ちょっと億劫そうに机に肘をついて座ってる。
樹音(じゅね)「凛真!早く早く、始まったよ!」
凛真「え、私はいいよ…」
心平(しんぺい)、樹音に手招きをされるも動かない。2階の教室の窓のから覗くと、下には女の子と彩人(あやと)
凛真モノ『私と彩人の関係と言えばー…』
女子「持田彩人(もちだあやと)くん、好きです!付き合ってくださっ」
彩人「(食い気味で)ごめん、俺には一生を誓った人がいるから」※にっこにこの笑顔
凛モノ『ただの幼馴染である、れっきとした家が隣の。』※あきれ顔
凛真(また言ってる…)
女子「え…佐野さんと付き合ってるの?」
彩人「付き合ってないよ」「今は」
凛真(普通の幼馴染だからね、今も昔もないから)
女子「じゃあ、私にもまだ可能性あるかっ」
彩人「(食い気味で)ないよ、だって俺には一生をっ」
これまたにっこにこの笑顔で。強制終了、で締める。

〇学校/教室
窓際にいる樹音と心平。ずっと頬杖をついたまま席に座ってる凛真。
樹音「久しぶりだったね~!」
心平「彩人に告白なんて勇気あるよなー」
樹音「あの子転校生かな?じゃないと彩人に告白なんて今更しないよね!」
心平「できねぇよなー、入学した時はしょっちゅうあったけどもう今はなー」
樹音「だって…彩人には凛真がいるからね!」
凛真「……。」※眉をひそめた困り顔
凛真「あのね、私と彩人は別にそんなんじゃっ」
彩人「りーまっ」「遅くなってごめん!ちょっと雑用が邪魔して」
教室に戻ってくる彩人。
樹音「いや、女の子からの告白を雑用って」
心平「書類コピーじゃねーんだぞ」
樹音「しかも邪魔ってね」
ひそひそ話す2人、彩人は聞いてない。凛真の机の前に両手をついて、凛真のことしか見てない。
彩人「帰ろう、凛真」
凛真「うん…」
ゆっくり立ち上がる。
樹音「まぁでも彩人って喋らなきゃカッコいいもんね!」
色白で整ったお顔に大きな瞳、小柄だけど可愛らしい見た目。にこっと笑って返す彩人。
樹音「本当数メートル距離置いたら最強」
心平「だよなー、友達ぐらいがいいんだよ彩人と付き合うのは」
じーっと心平の顔を見る彩人。
彩人「え、友達だったっけ?」
心平「友達だろ!?え、ちげぇーの!!?」
凛真「彩人、それは心平くんが可哀そうだから」
彩人「じゃあ友達で」※にこっと笑って 
心平「サノリマ気遣ってくれてありがとうな…」
樹音「……。」※気の毒そうな顔

凛真モノ『私と彩人の関係は幼馴染である、本当に。特に変わったこともなく、それ以下でもそれ以上でもない本当にただの幼馴染で』

教室から出て歩いていく凛真と彩人。
彩人「凛真アイス食べて帰ろ!」
凛真「いいけど」
その2人の後ろ姿を見てる樹音と心平。
心平「つーかあの2人ってマジで付き合ってねぇの?」
樹音「本人たちが言うんだからそうでしょ」
心平「どう見てもそんな空気出てるけどな」
樹音「まぁね」
遠い目で2人を見つめる。
樹音「でもあれは幼馴染っていうか、お母さんって感じかな」

〇学校/下駄箱
凛真「あーゆうのやめてよね!」
彩人、キョトンとした顔で。
凛真「誤解を招くでしょ!」
彩人「付き合ってないって言ったよ?」
凛真「そうじゃなくて!」
不服そうに下駄箱からローファーを取り出して床に音を立てて置く。
彩人「(ちょっと考えた様子を見せる)…。」「付き合ってないと一生を誓っちゃいけないの?」
凛真「だからそれが誤解を招くって言ってるの!」
脱いだ上靴をしまってローファーに履き替える、彩人の方を見て。
凛真「私たち幼馴染でしょ?」
ハキハキした凛真の声に一瞬顔を曇らせるも、真剣な顔をして。
彩人「俺と付き合ってよ、凛真」「俺は凛真のことが好きだよ」
向き合って、目が合った状態で。でもすぐに視線を逸らす凛真。
凛真「はいはい、帰るよ」
凛真(こんなのいつものことで本気じゃないんだから)(わかってるんだから、そんなこと)
少し俯いて寂しそうな顔をする彩人に背を向けて歩き出す、数歩歩いたところで足を止めて振り返る。
凛真「早く帰るよ」「アイス、食べて帰るんでしょ?」
すぐ笑顔になる彩人。
彩人「うん…!」
急いで上靴を履き替えて追いかけて隣に並ぶ。
彩人「俺とアイスどっちが好き?」
凛真「アイス」
彩人「違うの買って半分コしよ」
凛真「いいよ」

〇帰り道
並んで歩く2人
凛真(さっきのはちょっとびっくりした、ちょっとドキドキしちゃったじゃん…)(やめてくれないかな、毎度毎度あんなの…)
チラッと隣を見る、嬉しそうに何のアイス食べようか考えてる彩人。
凛真(もうアイスに夢中だし)
凛真「……。」
凛真(簡単にあんなこと言わないでほしい)
彩人「あ、凛真見て見て!」
スマホを見せてくる。
彩人「サーティーワンの新作~!!」
凛真(しかもちょっと高いアイスを食べようとしている…)
彩人「サツマイモとカボチャだって、秋だね~!」「ビターチョコミントってのもある」
嬉しそうにスマホの画面を見ながら。
彩人「凛真何にする?」
凛真「えっと、私は…」
彩人「あ、でも凛真チョコミント食べれないからサツマイモかカボチャにしよ」
凛真「え、いいよ!彩人チョコミント好きでしょ、チョコミントにしなよ!」
彩人「でも凛真好きじゃないじゃん」
凛真「そうだけど、それは彩人が好きなの食べればいいし!」
彩人「うん、でも凛真と食べたいし」「半分コ」
凛真、何か言いたげな表情。でも何も言えない。
凛真「…彩人がいいならいいけど」
彩人「やったー」
凛真、彩人から視線を逸らして前を向いて歩く。
凛真(彩人がいいならいいんだけどさ、でもなんか…)(そりゃ私はサツマイモもカボチャも好きだけど)
前から自転車が走ってくる、スマホを見てて気付いてない彩人。
凛真「彩人…!」
咄嗟に彩人の手を掴んで引っ張る。

〈彩人フラッシュバック〉
「離して!鬱陶しい…!!」
※ぼやっとした記憶で顔は出てこなくて口元のアップ

目を見開いて驚いた表情をする彩人の顔を見てすぐに手を離す。
凛真「ごめん!自転車が来て危ないって思ったから」「ごめんね!もっと早く言えばよかったんだけど間に合わなくて、それで手握っちゃって…」
凛真「あのっ」
彩人「大丈夫(笑って)」「凛真なら大丈夫だよ」
凛真「彩人…」
顔を見合わせる2人。
彩人「てか今のは俺が悪いし、歩きスマホしてた俺が」「だから凛真は悪くない」
彩人の笑った顔に申し訳なさそうな顔をする凛真。
彩人「行こ、早くアイス食べたいよね」
凛真「うん…」
彩人が歩き出す背中を見る凛真。
凛真(嘘つき、私に嘘つかないでよ)

〇お店の前
彩人「めっちゃおいしかった…!」
凛真「ね、おいしかった!サツマイモめーっちゃおいしかったね、バターの香りすごいおいしかった!」
話しながら歩き出す2人。
彩人「香りがおいしいって何?香りは匂いじゃん」
凛真「匂いもだよ!匂いもおいしかった!」
ふいに凛真の首元に近付く、くんっと匂いを嗅いで。
彩人「本当だ、凛真もいい匂いするおいしそう」
ニヤッと笑う彩人にボンッと顔を赤くする凛真。
凛真「私は食べ物じゃないから!」
彩人「いい香りだよ?なんの香水使ってるの?」
凛真「なんでもいいでしょ!」
また近付いてこようとする彩人の体をグイグイ押して引き離す。
凛真「もう帰るよ!今日宿題多いんだからね!」
彩人「ねぇ凛真、今日うち寄ってかない?」
グイグイ押してた手が止まる。
凛真「でも今日は…」
眉をハの字にしてふっと視線を変える。少し困った顔を見せる。
彩人「今日母さんいないから」
作り笑顔で笑う彩人に一瞬顔を上げた凛真、また目を伏せる。

凛真モノ『その言葉に私は弱い』

凛真「じゃあ、ちょっとだけ…」
彩人「やったー」「一緒に宿題しよ」

凛真モノ『彩人にそう言われると、私は断れない』

〇彩人の部屋
部屋の真ん中にある四角いテーブル、凛真が座る左隣に彩人。
机の上には教科書、ノート、筆箱が置いてあって宿題をしている凛真をじーっと見つめる彩人。
凛真「…彩人見過ぎだよ」
じっとのぞき込むように見て、たじたじな凛真。
凛真「私じゃなくてノート見てくれる?」
彩人「凛真のくちびるっておいしそうだなーって」
凛真「何言ってるの!?」
彩人「やっぱ凛真って食べ物なのかな?」
凛真「そんなわけないでしょ!」
キャッキャする彩人に声が慌てる凛真。
彩人「だってぷるぷるで甘そうなんだもん」「それ新しいリップ?初めて見る色だよね」
ドキッとする凛真、顔を赤くして彩人から顔を逸らす。
凛真「リップに甘いも何もないから」
彩人「じゃあ試してい?」
下からぐいっと近付いて、息が頬にかかるぐらい顔を近付ける。離れたくて咄嗟に立ち上がる凛真、両手を腰に置いて上から彩人を見る。
凛真「彩人勉強する気ないでしょ!しないなら怒るからね!?」
彩人ちょっとびっくりした表情で見上げる。
彩人「…そこ帰るんじゃないんだ」
凛真「私が帰ったら宿題しないもん!」「ちゃんと宿題はしてよ、わからないところあったら見てあげるから!」
頬杖を突きながら凛真のことを見上げて満足げな彩人。
凛真「わかった!?」
彩人「はーい」
凛真「返事だけはいいんだよね」
はぁっと息を吐いて座り直す、シャーペンを持とうするとテーブルの上に置いてあったスマホが鳴る。シャーペンを取るのをやめてスマホに手を伸ばし画面を確認して。
凛真(樹音から…)
パッと伸びて来た彩人の手にスマホを奪われる。
凛真「え?」
彩人「今宿題中だからスマホ禁止」
凛真「……。」「さっき散々よそ見してたよね?」
彩人「さぁ、宿題宿題~!」
目を細めて彩人の方を見る、ケロッとしてノートを広げる彩人。
凛真「彩人!!」
彩人「だって今は俺といるんだよ、俺のことだけ考えて」
じっと凛真の顔を見て、凛真一瞬何も言えなくなる。
ぷくっと頬を膨らませて、はぁっと息を吐く。
凛真「わかった、でもスマホは返して」
凛真「樹音からのLINEだから、樹音だって私に用があって連絡して来てるの」「彩人といるけど、樹音だって私の友達なんだからー…」
彩人「わかってなくない?」※ぼそっとかすかな声で
彩人「そうやって凛真も離れていくんだ!?」※今度は沸点が上がったように怒鳴る、怒ってるのに泣きそうな表情
凛真「…そんなこと言ってない」「私はそんなこと…」
瞳が潤む、耐えきれなくなって急いで教科書やノートををスクールバッグに詰め込んで立ち上がる。
凛真「帰る…!」
彩人「凛真!!」
ダダダッと階段を駆け下りる。

凛真モノ『なにそれ』『なにそれ』『なにそれ』『なんでそんなこと言うの…?』

涙をこぼしながら階段を下りて玄関まで走る。

凛真モノ『私は彩人のことー…』

彩人「待って凛真!」
追いかけて来た彩人、控えめに凛真の制服の裾を掴む。凛真、玄関のドアに手をかけたところで足を止める。
彩人「ごめん、凛真」
背中に向かって呼びかける。
彩人「凛真が俺と一緒にいるのに違うこと考えてるの嫌で、俺は凛真のことしか考えてないのに…」「凛真と2人でいられるのがうれしいから」
制服の裾を掴む彩人の手が小刻みに震えている。
彩人「いかないで、凛真」
緊迫した空気の中ドキドキする凛真、赤くなった顔にきゅっと口を紡んで瞳は潤んだまま。
凛真(わかってるの、わかってるよ)(だからドキドキなんてしないでよ、私)
彩人「楽しいから、凛真といるの」
凛真(こんなことでうれしいって思わないでよ)
彩人「好きだから、凛真のこと」

凛真モノ『こんなの恋じゃないから』

ドアノブから手を離す、こぼれ落ちた涙を拭いて振り返る。

凛真「私だって楽しいよ、彩人といるの」

凛真モノ『こんなの恋じゃないよ、彩人の勘違いだよ。』

〇玄関から部屋に戻る途中の廊下
彩人の後ろ姿を見て。
凛真「彩人最近ちゃんと食べてる?また痩せたことない?」
彩人「食べてるよ」
凛真「ほんとかなぁ…」
心配そうに見上げる。
彩人「身長はもう伸びそうにないけどね」
振り返った彩人と目が合う。
彩人「でもこれは子供の頃に足りなかった栄養のせいかな」
にこっと笑って、凛真は困った顔。
凛真「じゃあせめて夜はあったかくして寝てね!」
彩人「はーい!」

〇学校/廊下
次の日の朝、彩人と登校して来た凛真。廊下で樹音に呼ばれる。
樹音「凛真~!おはよ~!」
凛真「樹音おはよう、昨日はごめんね!?返信遅くなっちゃって」※手を合わせて謝る
樹音「いいよいいよ、大した用じゃないし」
ほらねという彩人の顔に頬を膨らませる凛真。樹音頭に?マークを浮かべる。
樹音「今日の1時間目自習だって、文化祭実行決めるんだって」
凛真「あ、文化祭!もうすぐだもんね!」
樹音「模擬店とか何するか楽しみだよね~!」
凛真と樹音が歩いていく、その一歩後ろを歩いている彩人。

凛真モノ『私と彩人の関係は幼馴染で、きっとこの先もそれはずっと変わらない』

前日彩人に告白して来た女子再び、廊下を走って追いかけてくる。

女子「彩人くん!私やっぱり諦められない…!」
嫌そうに振り返る彩人、凛真と樹音も振り返る。
女子「だって佐野さんとは付き合ってないんだよね!?じゃあまだ私にもっ」
彩人「ないよ、1ミリもないから」
フッと視線を逸らして前を向く、スタスタ歩き出す。

凛真モノ『だって今までもそうやって来たんだから、これからだってー…』

女子「待って彩人くん…!」
凛真「!」
彩人を引き止めようとして女子が手を伸ばす、彩人の手を掴もうとした瞬間前に飛び出る凛真。手を広げて、彩人と女子の間に入って阻止する。
凛真「私のだから!」「彩人は私のだから!!」
女子も樹音も彩人も凛真の行動に驚く。
彩人「え、そうなの?」
凛真「……。」※やってしまったという表情

凛真モノ『変わらない、と思ってたのに』