新作香水の発表会当日。
デパートの特設会場は多くの報道陣と来場者で賑わい、玲奈はその中央に立っていた。
スポットライトを浴びながら挨拶をする玲奈。
震える声を必死に抑え、自分の言葉で香水の魅力を語る。
「……この香りは、纏う人の“本当の色”を引き出してくれる。
私にとって化粧品は魔法でした。閉じ込められた自分を少しだけ自由にしてくれる魔法。
その魔法を、誰かのために届けられたらと願っています」
来場者の拍手に、玲奈の胸が熱くなった。
だが、その視線の先――透真が会場の後方に立ち、美咲と並んでいるのが見えた。
心臓が痛みに締め付けられる。
発表会を終え、屋敷に戻った夜。
玲奈は意を決して透真の部屋を訪ねた。
「……話があります」
透真は無言で視線を上げる。
机の上には、あの香水の瓶が置かれていた。
「どうして……どうして美咲さんと一緒にいるんですか」
声が震え、胸の奥から炎のように熱い感情が噴き出す。
「私には“契約だから関係ない”と言うのに……! 本当は彼女を――」
「違う!」
透真の声が低く響いた。
その鋭さに玲奈は一瞬言葉を失う。
「美咲は関係ない。俺が作ったこの香りは……」
言いかけた透真の声がかすれる。
玲奈は涙をこぼしながら叫ぶ。
「じゃあ、誰のためなんですか! 教えてください……! 私には知る権利があるはずです!」
沈黙。
透真の胸が大きく上下し、抑えていた感情が堰を切ったようにあふれ出した。
「……お前のためだ」
玲奈の瞳が大きく揺れる。
「最初に会った時から……お前がその香りを纏っていた姿が忘れられなかった。
控えめで、自分を隠してばかりいるのに……香りだけが、真っ直ぐにお前の心を語っていた。
俺は……その色を閉じ込めたかった。お前だけの香りを」
胸の奥から吐き出された言葉は、炎のように熱く、激しい。
玲奈は頬を伝う涙を拭うこともできなかった。
透真の瞳が真っ直ぐに自分を射抜いている。
冷たい仮面の奥に隠された本心――。
「……だったら、どうして今まで……」
「言えなかった。契約に縛られて、感情を口にすればお前を苦しめると思った。
けれど……他の男と笑うお前を見た瞬間、理性が壊れそうになった」
声が震えていた。
普段の透真からは想像もできない、必死な声音。
玲奈の心に炎が燃え広がる。
疑念と嫉妬で黒く曇っていた世界に、眩しい光が差し込む。
けれど、その光はあまりにも強すぎて、まだ信じ切れない。
「……私なんかのために?」
透真は迷わず頷いた。
「お前じゃなければならなかった」
その言葉は、炎となって玲奈の心を焼き尽くした。
痛みと喜びが入り混じり、胸が熱くて苦しい。
だが次の瞬間、透真は目を閉じ、吐き捨てるように言った。
「……だからこそ、これ以上は危険だ」
「え……?」
「俺は、お前を守るために“契約”を作った。
これ以上踏み込めば、お前を壊してしまう」
その声には、再び冷たさが戻っていた。
玲奈の心は、再び揺れる。
愛を告げられたのに、同時に距離を置かれた――。
燃え上がった炎は、まだ鎮まることを知らなかった。
デパートの特設会場は多くの報道陣と来場者で賑わい、玲奈はその中央に立っていた。
スポットライトを浴びながら挨拶をする玲奈。
震える声を必死に抑え、自分の言葉で香水の魅力を語る。
「……この香りは、纏う人の“本当の色”を引き出してくれる。
私にとって化粧品は魔法でした。閉じ込められた自分を少しだけ自由にしてくれる魔法。
その魔法を、誰かのために届けられたらと願っています」
来場者の拍手に、玲奈の胸が熱くなった。
だが、その視線の先――透真が会場の後方に立ち、美咲と並んでいるのが見えた。
心臓が痛みに締め付けられる。
発表会を終え、屋敷に戻った夜。
玲奈は意を決して透真の部屋を訪ねた。
「……話があります」
透真は無言で視線を上げる。
机の上には、あの香水の瓶が置かれていた。
「どうして……どうして美咲さんと一緒にいるんですか」
声が震え、胸の奥から炎のように熱い感情が噴き出す。
「私には“契約だから関係ない”と言うのに……! 本当は彼女を――」
「違う!」
透真の声が低く響いた。
その鋭さに玲奈は一瞬言葉を失う。
「美咲は関係ない。俺が作ったこの香りは……」
言いかけた透真の声がかすれる。
玲奈は涙をこぼしながら叫ぶ。
「じゃあ、誰のためなんですか! 教えてください……! 私には知る権利があるはずです!」
沈黙。
透真の胸が大きく上下し、抑えていた感情が堰を切ったようにあふれ出した。
「……お前のためだ」
玲奈の瞳が大きく揺れる。
「最初に会った時から……お前がその香りを纏っていた姿が忘れられなかった。
控えめで、自分を隠してばかりいるのに……香りだけが、真っ直ぐにお前の心を語っていた。
俺は……その色を閉じ込めたかった。お前だけの香りを」
胸の奥から吐き出された言葉は、炎のように熱く、激しい。
玲奈は頬を伝う涙を拭うこともできなかった。
透真の瞳が真っ直ぐに自分を射抜いている。
冷たい仮面の奥に隠された本心――。
「……だったら、どうして今まで……」
「言えなかった。契約に縛られて、感情を口にすればお前を苦しめると思った。
けれど……他の男と笑うお前を見た瞬間、理性が壊れそうになった」
声が震えていた。
普段の透真からは想像もできない、必死な声音。
玲奈の心に炎が燃え広がる。
疑念と嫉妬で黒く曇っていた世界に、眩しい光が差し込む。
けれど、その光はあまりにも強すぎて、まだ信じ切れない。
「……私なんかのために?」
透真は迷わず頷いた。
「お前じゃなければならなかった」
その言葉は、炎となって玲奈の心を焼き尽くした。
痛みと喜びが入り混じり、胸が熱くて苦しい。
だが次の瞬間、透真は目を閉じ、吐き捨てるように言った。
「……だからこそ、これ以上は危険だ」
「え……?」
「俺は、お前を守るために“契約”を作った。
これ以上踏み込めば、お前を壊してしまう」
その声には、再び冷たさが戻っていた。
玲奈の心は、再び揺れる。
愛を告げられたのに、同時に距離を置かれた――。
燃え上がった炎は、まだ鎮まることを知らなかった。

