親愛なる魔王様へ〜The Encounter〜

「実は、父さんが貧乏になってしまってね。使用人たちにお給料を払えなくなってしまったんだ。あと、人に名前を聞かれた時は「クロウディア」ではなく「ガーデン」と言いなさい」

突然言われたことにルーチェは首を傾げつつも頷く。新しい家は前に住んでいた屋敷より小さいものの、のどかで落ち着いた環境だった。ルーチェはそこでルカとエレナから勉学や魔法を学び、友達ができ、色々なことを経験しながら数年が経ち、ルーチェは十七歳になった。

ルーチェはビオラに魔法薬の作り方を教えてもらっていた。

「そうそう。ゆっくりかき混ぜて。早く混ぜると失敗しちゃうから」

「兄さん!色が変わってきた!」

ルーチェが笑う。ビオラも笑う。穏やかな時間が流れている。そこに八咫烏とイズナがやって来た。

『主人、アーサーとティムが来ましたよ』

『特訓をしたいみたいです!』

その声にルーチェは手を止める。アーサー・ウィリアムズとティム・ラファールはカラミティにある学校に通っていたのだが、訳あって退学してこの町に戻って来た。二人は自主勉強をして夢を追いかけている。