親愛なる魔王様へ〜The Encounter〜

「お父さん?お母さん?兄さん?一体、みんなどうしたの?」

その声にビオラとエレナが顔を上げ、「ルーチェ!」と言いながら彼を抱き締める。鼻を啜る音がルーチェの耳に響いた。その後にルーチェは戸惑う。

(どうして二人は泣いているの?)

『それは、僕のせいです』

ルーチェの足元にイズナが現れる。しかし、ルーチェが「どういうこと?」と訊ねる前にルカが口を開いた。

「イズナ、黙っていてくれ。このことはルーチェは知らなくていい」

『かしこまりました』

イズナが消えてしまった後、ルカはルーチェに笑いかけた。

「ルーチェ、これからみんなで引っ越しをしよう」



ルーチェ、ビオラ、ルカ、エレナが引っ越したのは、それまで住んでいた屋敷から遠く離れた場所だった。そして、引っ越し先には使用人たちは誰も付いて来なかった。長く屋敷に仕え、忠誠心の高いジュゼッペですらだ。

「どうしてみんなは来ないの?」

ルーチェの問いに対し、ルカは困った様子で笑った後、ゆっくりと唇を開いた。