ルーチェの手をビオラが引き、二人は駆け出す。他の使用人たちに見つからないようにしながら進んでいく。まるで、ダンジョンを冒険している勇者になったような気分を二人は味わっていた。

「兄さん、ここって何だろう……」

ルーチェがある部屋を指差す。そこは、ルーチェもビオラも入ったことがない部屋だった。ビオラは微笑み、「入ってみよう!」と扉を勢いよく開ける。積もっていた埃がモワリと舞い上がり、二人は咳き込んだ。

部屋には古びた家具らしきものや、骨董品のようなものがごちゃごちゃと置かれていた。どうやら物置のようだ。

「宝物とかあるかな」

ビオラが目を輝かせ、一つずつ見て回る。ルーチェも同じように見て回った。その時である。

『呪いに打ち勝つ子よ。この試練に耐えてみせなさい』

どこからか声が響いた。刹那、ビオラの顔色がサッと変わる。

「ルーチェ!!危ない!!」

ビオラは杖を取り出し、魔法を放つ。ルーチェは後ろを振り返った。そこには、黒い触手を持った得体の知れない存在がいる。