「クラル、大丈夫か?」

「大丈夫だよ。父さん」

その会話にルーチェは息を呑む。

(クラル?クラウスさんじゃないの!?)

ルーチェが驚く中、二人は会話を続ける。

「まだ情報は出てこないのか?」

「うん。様子を見ているけど、あの子が呪いを使って世界を混乱させているようには見えないんだよね」

一体何の話をしているのか。ルーチェとビオラは顔を見合わせる。その時だった。男性がルーチェとビオラの方を見る。

「君たちは……!」

男性が驚いた様子で何かを言いかける。素早くビオラは杖を二人に向けた。そして、淡々と「ずっと怪しいと思ってたんだよね」と睨み付ける。

「兄さん!」

ルーチェは止めようとするものの、ビオラは魔力を杖に込めていく。クラウスーーー否、クラルも剣を取り出して構えた。ルーチェは叫ぶように訊ねる。

「あなたは誰ですか!?クラウスさんの正体は一体何なんですか!?」

「クラウス・ディオールは偽名だよ。僕の本当の名前はクラル・ディスペア。そこにいるのは僕の父、クロード・ディスペア。魔王だ」