「ミナサマ集まりましたヵ?では説明ヲ始めましょゥ」


 ボイスチェンジャーがかかっているような、どこか機械じみた声が聞こえる。

 目を凝らしても、舞台の上に姿はない。

 周囲に視線を彷徨わせても、答えは見つからない。


 「誰なんだお前!」


 「よく分かんねぇけど、ここから出せよ!」


 生徒の怒号が聞こえてくる。

 学校に不審者が入ってきたのと同じように、相手をあまり刺激するのは良くないような気がする。

 興奮して何をしでかすか分からないし、今の状態では相手の方がずっと立場が上だからだ。


 「まアまア、落ち着イテくださイ。単刀直入に話しマしょゥ。ミナサマには人狼ゲームをしテモラいまㇲ」


 これはいくら刺激しても無駄なタイプだったようだ。

 声の主からは圧倒的とも言える余裕感がある。

 そのおかげなのか、声を荒げていた生徒たちは少し落ち着きを取り戻したようだ。


 「え、人狼ゲーム?」


 「そんなことをするためだけに、態々閉じ込めたって言うの?」


 周りから困惑の声が上がる。

 たしかにそうだ。

 人狼ゲームなんてやろうと思えばいつでもできる。

 ここまで大掛かりなことをしなくてもいいはずだ。

 …これが「普通」の人狼ゲームだったら、の話だが。


 「あァ、只の人狼ゲームではあリマせんョ。命を賭けテモラいまㇲ」


 背筋が凍る。

 命を賭ける?聞き間違いだよな?と春風の中で嫌な予感が渦巻く。


 「い、命を…?」


 「何馬鹿なこと言ってんだよ?」


 周りが信じられないというような反応をして、さっきの言葉が聞き間違いではないことに気づく。

 嗚呼、今からでも嘘だと言ってはくれはしないだろうか。

 そんな言葉出てくるわけもないのだが。