噂に囲まれ、孤立が決定的になった日々。
同僚の視線は冷たく、私の席の周りには小さな空白ができていた。
――居場所なんて、どこにもない。
そんなとき、そっと声をかけてくれるのは佐伯だけだった。
「西園寺さん、今日は外でランチしない? 空気変えたほうがいい」
差し出された笑顔に、胸が熱くなる。
けれど私は小さく首を振った。
「……ありがとう。でも大丈夫」
本当は大丈夫なんかじゃない。
でも、彼の優しさに縋ったら、自分が壊れてしまいそうで――。
夜。
残業で残ったオフィスに、私と藤堂部長だけがいた。
机に向かって資料を整理する彼の姿を見た瞬間、心の奥に押し込めていた想いが堰を切ったように溢れ出した。
「部長」
声が震える。
「……何だ」
冷たい声。けれど、その響きに胸が痛む。
「どうして、何も言ってくれないんですか」
涙が滲む。
「噂が広がって、私がどんなふうに見られているか……わかってるくせに」
彼は目を伏せ、答えを飲み込んだまま沈黙する。
「部長は突き放すのに、ときどき優しい……そんなふうにされたら、もう抑えられないんです」
頬を伝う涙が止まらなかった。
「十年前だって……何も言わずに私を置いていった。
また同じように背を向けるんですか」
掠れた声で問い詰めると、彼は深く眉を寄せた。
「……西園寺」
苦しげに名前を呼び、続けざまに言う。
「俺には、その言葉を受け取る資格がない」
「資格なんて……そんなの関係ありません!」
抑えきれずに叫んだ。
その瞬間、会議室のドアが開いた。
「……まだ残ってたんだ」
佐伯が顔を覗かせ、私の涙に気づいて目を見開いた。
「西園寺さん……大丈夫?」
彼は迷わずハンカチを差し出してくれる。
「泣く必要なんてない。君は、何も悪くない」
温かな声。
優しさに触れた途端、胸が張り裂けそうになった。
彼の隣にいたら、こんなに苦しまなくてもいいのに。
それでも、私の視線は藤堂部長を追ってしまう。
冷たい拒絶の言葉と、抑えきれない想いがぶつかり合い、心はどうしようもなく乱れていた。
――私は誰を求めているのだろう。
優しい手を差し伸べてくれる佐伯か。
それとも、何度も傷つけるのに、忘れられない彼なのか。
抑えきれない想いは、夜の静けさの中で、ますます燃え広がっていった。
同僚の視線は冷たく、私の席の周りには小さな空白ができていた。
――居場所なんて、どこにもない。
そんなとき、そっと声をかけてくれるのは佐伯だけだった。
「西園寺さん、今日は外でランチしない? 空気変えたほうがいい」
差し出された笑顔に、胸が熱くなる。
けれど私は小さく首を振った。
「……ありがとう。でも大丈夫」
本当は大丈夫なんかじゃない。
でも、彼の優しさに縋ったら、自分が壊れてしまいそうで――。
夜。
残業で残ったオフィスに、私と藤堂部長だけがいた。
机に向かって資料を整理する彼の姿を見た瞬間、心の奥に押し込めていた想いが堰を切ったように溢れ出した。
「部長」
声が震える。
「……何だ」
冷たい声。けれど、その響きに胸が痛む。
「どうして、何も言ってくれないんですか」
涙が滲む。
「噂が広がって、私がどんなふうに見られているか……わかってるくせに」
彼は目を伏せ、答えを飲み込んだまま沈黙する。
「部長は突き放すのに、ときどき優しい……そんなふうにされたら、もう抑えられないんです」
頬を伝う涙が止まらなかった。
「十年前だって……何も言わずに私を置いていった。
また同じように背を向けるんですか」
掠れた声で問い詰めると、彼は深く眉を寄せた。
「……西園寺」
苦しげに名前を呼び、続けざまに言う。
「俺には、その言葉を受け取る資格がない」
「資格なんて……そんなの関係ありません!」
抑えきれずに叫んだ。
その瞬間、会議室のドアが開いた。
「……まだ残ってたんだ」
佐伯が顔を覗かせ、私の涙に気づいて目を見開いた。
「西園寺さん……大丈夫?」
彼は迷わずハンカチを差し出してくれる。
「泣く必要なんてない。君は、何も悪くない」
温かな声。
優しさに触れた途端、胸が張り裂けそうになった。
彼の隣にいたら、こんなに苦しまなくてもいいのに。
それでも、私の視線は藤堂部長を追ってしまう。
冷たい拒絶の言葉と、抑えきれない想いがぶつかり合い、心はどうしようもなく乱れていた。
――私は誰を求めているのだろう。
優しい手を差し伸べてくれる佐伯か。
それとも、何度も傷つけるのに、忘れられない彼なのか。
抑えきれない想いは、夜の静けさの中で、ますます燃え広がっていった。

