【翌朝・民政党本部】
朝になり
黒川皐月が、緊急記者会見を開くというニュースは
瞬く間に、日本中を駆け巡った
テレビの、全てのチャンネルが
民政党本部の前から、生中継を始めている
ネットでは、様々な憶測が、飛び交っていた
『大野勇次郎に続き、黒川までもが、総裁選を辞退するのでは?』
『一体、この国の政治の裏で、何が起きているんだ?』
日本中が、緊張感に、包まれていた
警視庁捜査一課の石松は
部下たちに、檄を飛ばしていた
石松:「いいか!絶対に、黒川皐月を死なせるな!」
石松:「SPだけでなく、我々も、壁になる!」
石松:「犯人は、必ず、この会見を、見ているはずだ!」
やがて
運命の、会見の時間が来た
会場は、おびただしい数の、記者とカメラで埋め尽くされている
その、喧騒の中
黒川皐月が、姿を現した
その、痛々しい姿に
会場の、全ての空気が、凍り付いた
彼女は、左腕に、白いギプスを付け
首から、三角巾で、腕を吊っている
だが
彼女の、その瞳は
全く、死んでいなかった
むしろ
その目は、これまで以上に、鋭く
そして、好戦的な光を、宿していた
秘書が、椅子を引く
黒川は、そこに、静かに腰を下ろした
無数の、フラッシュが焚かれる
だが、彼女は、一切、瞬きをしなかった
ただ、真っ直ぐに、前を見据えている
そして
彼女は、マイクの前に、立った
日本中が、世界中が、見守る中
女帝の、反撃の言葉が
今、放たれようとしていた。
会場の、一番隅
その、暗がりの中から
一人の男が
じっと、その姿を、見つめていた
黒川:「本日は、お集まりいただき、ありがとうございます」
黒川:「民政党の、黒川皐月です」
その、凛とした、第一声に
あれほど騒がしかった会場が
水を打ったように、静まり返った
黒川:「まず、今回の総裁選について、皆様にお伝えすべき、重大な事実がございます」
黒川:「この総裁選が始まってから」
黒川:「大野勇次郎議員と、私の元に」
黒川:「『総裁選を辞退しろ』という、脅迫が、ありました」
その、衝撃的な告白に
会場が、どよめいた
黒川:「そして、その脅迫の結果」
黒川:「大野勇次郎議員は、総裁選を、辞退されました」
黒川:「その、一連の事件の、犯人は」
彼女が
全ての元凶である、速水の名を
口にしようとした
まさに、その瞬間だった
バチン!
という音と共に
会見場の、全ての電気が、消えた
完全な、闇
その、闇の中で
最初に、動いたのは
会場の隅にいた、あの、人影だった
記者:「シャッターを切れ!何でもいいから撮り続けろ!」
記者の、怒号が飛ぶ
次の瞬間
無数の、ストロボの光が
闇を、断続的に、切り裂いた
それと、同時に
「ぐぅっ……!」
誰かの、悲鳴のような、唸り声が
闇の中から、聞こえた
警察官たちが、ステージ上へと、雪崩れ込む
怒号の嵐
炊き続けられる、ストロボの光
地獄のような、混乱
やがて
非常電源が、作動し
会場の、照明が、再び、灯った
だが
黒川皐月が、立っていたはずの場所には
彼女を守るように、山となった
警察官たちの、壁があるだけだった
その、壁の向こう側で、何が起きたのか
もはや、誰にも、分からなかった。



