④ 第三部 ― 真相の影
犠牲者が増えるたびに、囁きは鮮明になっていった。
そして今度は、藤崎修一の耳に直接届いた。
「……あや……」
聞き覚えのない少女の声。
それは、二十年前に消えた神谷家の長女・神谷綾の名前だった。
修一は相沢に訴えた。
「声が綾って……綾って呼んでました。あれは、彼女が……」
相沢は胸の奥に重い確信を抱いた。
――やはり、囁きの正体は犠牲者の声なのか?
ふたりは改めて当時の記録を洗い直し、ある新事実にたどり着く。
事件の直前、神谷綾は友人に「お父さんがぜんぶ隠す」と漏らしていたという。
その“お父さん”とは、神谷家の父なのか。
それとも、村の有力者として力を持っていた別の“父親”なのか。
さらに取材を進めると、失踪の夜に神谷家を訪れていた“第三の人物”の存在が浮かび上がった。
元駐在でもなく、農家の男でもない。
名前は記録から消されていたが、村の人々は一様に顔を強張らせて口を閉ざした。
――事件の鍵を握るのは、その“誰か”だ。
だがその矢先、相沢の部屋の壁に新たな血文字が浮かんだ。
赤黒い線はゆっくりと文字を結び、まるで声の続きを語るように刻まれた。
「ほんとうのはんにんは おまえのちかくに」
相沢は息を呑んだ。
囁きは犠牲者の声かもしれない。
だが同時に、それは生者を惑わし、疑心暗鬼に陥れる罠でもある。
修一でさえ、信じてよいのか分からなくなった。
血文字が告げる「近くにいる犯人」とは、村の関係者なのか。
それとも――相沢自身なのか。
答えを求めて耳を澄ませば澄ますほど、声は重なり、囁きは増えていく。
「ゆるして」「しってる」「ほんとうは」
犠牲者の悲鳴とも、加害者の罪悪感ともつかぬ声が、相沢の内側を満たしていった。
犠牲者が増えるたびに、囁きは鮮明になっていった。
そして今度は、藤崎修一の耳に直接届いた。
「……あや……」
聞き覚えのない少女の声。
それは、二十年前に消えた神谷家の長女・神谷綾の名前だった。
修一は相沢に訴えた。
「声が綾って……綾って呼んでました。あれは、彼女が……」
相沢は胸の奥に重い確信を抱いた。
――やはり、囁きの正体は犠牲者の声なのか?
ふたりは改めて当時の記録を洗い直し、ある新事実にたどり着く。
事件の直前、神谷綾は友人に「お父さんがぜんぶ隠す」と漏らしていたという。
その“お父さん”とは、神谷家の父なのか。
それとも、村の有力者として力を持っていた別の“父親”なのか。
さらに取材を進めると、失踪の夜に神谷家を訪れていた“第三の人物”の存在が浮かび上がった。
元駐在でもなく、農家の男でもない。
名前は記録から消されていたが、村の人々は一様に顔を強張らせて口を閉ざした。
――事件の鍵を握るのは、その“誰か”だ。
だがその矢先、相沢の部屋の壁に新たな血文字が浮かんだ。
赤黒い線はゆっくりと文字を結び、まるで声の続きを語るように刻まれた。
「ほんとうのはんにんは おまえのちかくに」
相沢は息を呑んだ。
囁きは犠牲者の声かもしれない。
だが同時に、それは生者を惑わし、疑心暗鬼に陥れる罠でもある。
修一でさえ、信じてよいのか分からなくなった。
血文字が告げる「近くにいる犯人」とは、村の関係者なのか。
それとも――相沢自身なのか。
答えを求めて耳を澄ませば澄ますほど、声は重なり、囁きは増えていく。
「ゆるして」「しってる」「ほんとうは」
犠牲者の悲鳴とも、加害者の罪悪感ともつかぬ声が、相沢の内側を満たしていった。

