僕の愛しい泥棒娘

子供たちの部屋に行っても子供達も乳母も
いない。ユミアも部屋に居なかったので、
執務室をのぞいてみてびっくりした。

本棚の半分を占めていた書類や本がない。

アウスレッドは机の上に白い便箋が置いて
あるのを見つけた。

嫌な予感がしたがとりあえず読んでみなけれ
ばと震える指で便箋を取り上げて、文章を確
認すると椅子にへたり込んだ。

いつでも離縁に応じます。慰謝料は何も要り
ません。子供達は私が育てます。
あなたには渡しません。
跡取りが必要なら伯爵令嬢に産んでもらって
下さい。
お若いようなのですぐに何人でも生まれるで
しょう。
もうすでに妊娠しているかもしれませんね。
アズナール商会は私が一人でやっていきます
ご心配なく　　　　　ユミア
追伸、離縁状が用意出来たらサリーヌに預け
て下さい。すぐにサインをして送ります。
公爵様、ミアレーヌ様にはたくさんの愛情を
頂きました。心より感謝申し上げます。

そこに母親がやってきた。アウスレッドが帰
ってきたのに気づいて様子を見にきてくれた
のだろう。

アウスレッドはユミアの残した手紙を母親に
渡した。

「そう、ユミアに知れたらこうなると思って
いたわ。なぜすぐにすべての事情を話して置
かなかったの。自分の夫の不倫の噂を人から
聞くのは屈辱以外の何物でもないのよ。ユミ
アの性格をいやという程知ってるくせにレッ
ドの失策ね。自分で何とかしなさい。ユミア
と子供達を手放したら一生レッドを許しませ
んからね」

そう言って足音もあらく出て行った。