○軽井沢駅 昼

新幹線を降りた美優と蓮。軽井沢の爽やかな空気が二人を包む。

美優:「涼しくて気持ちいいですね」

蓮:「東京とは全然違うでしょう?」

美優:「はい。空気が澄んでいて」

蓮、タクシーを呼ぶ。

蓮:「別荘まではタクシーで20分ほどです」

美優:「楽しみです」

タクシーに乗り込む二人。美優、窓から見える緑豊かな景色に感動している。

美優:「きれい…こんな景色、初めて見ます」

蓮:「美優さんが喜んでくれて嬉しいです」


○軽井沢 蓮の別荘 外観

森の中にひっそりと佇む洋風の別荘。決して豪華すぎず、品のある建物。

美優:「素敵な別荘ですね」

蓮あ:「父が建てたものです。子供の頃はよく家族で来ていました」

美優:「家族で…」

蓮:「でも、大人になってからは一人で来ることが多くて」

少し寂しそうな表情を見せる蓮。

蓮:「今日は、美優さんと一緒に来ることができて本当に嬉しい」

美優:「私も、こんな素敵なところに連れてきていただいて」

蓮、美優の手を取る。

蓮:「中に入りましょう」



○別荘内 リビング

暖炉のある居心地の良いリビング。大きな窓からは森が見える。

美優:「本当に素敵…まるで映画の中みたい」

蓮:「気に入ってもらえて良かった」

美優:「こんなところで育ったら、どんな風になるんでしょう」

蓮:「どういう意味ですか?」

美優:「いえ、私とは全然違う環境だなって」

蓮:「美優さん、また始まりましたね」

美優:「え?」

蓮:「自分を卑下することです」

優しく微笑む蓮。

蓮:「環境は違うかもしれませんが、あなたの方がよほど立派に育っていますよ」

美優:「そんなことないです」

蓮:「家族を支えて、勉強も頑張って、仕事も一生懸命。私にはとてもできません」

美優、蓮の言葉に心を動かされる。



○別荘内 キッチン

蓮:「お昼を作りましょうか」

美優:「私が作ります」

蓮:「いえいえ、今日は私が」

美優:「でも、お客様にそんなことを…」

蓮:「お客様? 美優さんは私の大切な人です」

美優、その言葉に胸が高鳴る。

蓮:「一緒に作りませんか?」

美優:「はい」

二人でキッチンに立つ。蓮がパスタを茹で、美優がサラダを作る。

美優:「蓮さん、お料理上手なんですね」

蓮:「一人暮らしが長いので、少しは」

美優:「意外です」

蓮:「意外?」

美優:「もっと…何でも人にやってもらっているのかと」

蓮:「確かに会社では秘書にお世話になっていますが、プライベートは自分でやります」

自然な会話を楽しむ二人。



○別荘内 テラス 昼

森を望むテラスで、手作りのランチを食べる二人。

美優:「とても美味しいです」

蓮:「それは良かった」

美優:「こんな贅沢な時間、初めてです」

蓮:「贅沢?」

美優:「はい。美味しいお料理と、きれいな景色と、そして…」

蓮:「そして?」

美優:「大好きな人と一緒にいること」

蓮、嬉しそうに微笑む。

蓮:「私も同じです」

美優:「蓮さんにとっては普通のことかもしれませんが…」

蓮:「そんなことはありません」

美優:「え?」

蓮:「こんなに心から楽しいと思ったのは、生まれて初めてです」

美優:「本当ですか?」

蓮:「本当です。美優さんといると、全てが特別になります」


○別荘周辺の森 午後

手を繋いで森を歩く二人。木漏れ日が美しい。

美優:「気持ちいいですね」

蓮:「この道、子供の頃よく歩きました」

美優:「どんな子供だったんですか?」

蓮:「大人しい子供でした。本を読むのが好きで」

美優:「今と同じですね」

蓮:「友達も少なくて…」

美優:「意外です。人気者だったと思っていました」

蓮:「どうしてですか?」

美優:「だって、優しくて、頭が良くて、カッコいいから」

蓮、立ち止まって美優を見つめる。

蓮:「美優さん」

美優:「はい」

蓮:「あなたに出会えて、本当に良かった」

森の中で見つめ合う二人。



○軽井沢の湖 夕方

静かな湖のほとりに到着。水面が夕日に照らされている。

美優:「わあ…きれい」

蓮:「ここが私の一番好きな場所です」

美優:「素晴らしいですね」

ベンチに並んで座る二人。

蓮:「美優さん、将来の夢を聞かせてください」

美優:「将来の夢?」

蓮:「国際機関で働くこと以外に、プライベートでの夢は?」

美優、少し考える。

美優:「家族を幸せにしたいです。お母さんの病気を治して、健人が夢を叶えられるように支えたい」

蓮:「素晴らしい夢ですね」

美優:「蓮さんは?」

蓮:「私は…」

間を置いて。

蓮:「あなたと一緒に歩んでいきたい」

美優:「蓮さん…」

蓮:「まだ早すぎるかもしれませんが、あなたとなら未来を描けると思うんです」

美優、涙ぐむ。

美優:「私も…蓮さんとなら」


○別荘内 キッチン 夕方

一緒に夕食の準備をする二人。今度は美優が主に料理を担当。

美優:「大したものは作れませんが…」

蓮:「美優さんの手料理が食べられるなんて幸せです」

美優:「お母さんに教わったハンバーグです」

蓮:「楽しみです」

美優が料理をする間、蓮がワインを開ける。

蓮:「お酒は大丈夫ですか?」

美優:「少しなら」

蓮:「無理はしないでくださいね」

家庭的な雰囲気の中で、自然に役割分担をする二人。

○別荘内 ダイニング 夜

キャンドルを灯した食卓で夕食を取る二人。

蓮:「とても美味しいです」

美優:「本当ですか?」

蓮:「はい。愛情がこもっているからでしょうか」

美優、顔を赤らめる。

美優:「蓮さん…」

蓮:「乾杯しましょう」

ワイングラスを合わせる。

蓮:「私たちの未来に」

美優:「私たちの未来に」

お酒で少しほころんだ美優の表情が、より美しく見える。

蓮:「美優さん、今日は本当に楽しかった」

美優:「私も。夢みたいでした」

蓮:「夢じゃありません。これからも、こんな時間を一緒に過ごしましょう」

美優:「はい」


○別荘内 リビング 夜

暖炉の火を囲んで、ソファに並んで座る二人。美優、蓮の肩にもたれている。

蓮:「寒くありませんか?」

美優:「大丈夫です。温かいです」

蓮:「美優さん」

美優:「はい」

蓮:「愛してます」

美優:「私も愛してます」

蓮、美優の髪をそっと撫でる。

美優:「蓮さんの胸の音、聞こえます」

蓮:「どんな音ですか?」

美優:「とても早くて…私と同じです」

蓮、美優を見つめる。

蓮:「キスしてもいいですか?」

美優:「はい…」

暖炉の炎に照らされて、深いキスを交わす二人。


○別荘外 テラス 深夜

満天の星空の下、二人がテラスに出ている。

美優:「こんなにたくさんの星、初めて見ました」

蓮:「東京では見えませんからね」

美優:「きれい…」

蓮:「美優さんの方がきれいです」

美優:「もう…」

蓮、美優を後ろから抱きしめる。

蓮:「この時間が止まってほしい」

美優:「私も同じことを思ってました」

蓮:「美優さん」

美優:「はい」

蓮:「あなたは私の宝物です」

美優:「蓮さん…」

振り返る美優。再び口づけを交わす。

美優:「私も、蓮さんが私の一番大切な人です」

蓮:「ありがとう」

星空の下で抱き合う二人。


○別荘内 翌朝

朝食を済ませ、東京に戻る準備をする二人。

美優:「本当に楽しかったです」

蓮:「私もです。また来ましょう」

美優:「はい、ぜひ」

荷物をまとめながら。

蓮:「美優さん、昨夜は…」

美優:「はい」

蓮:「無理をさせてしまいませんでしたか?」

美優:「いえ、とても幸せでした」

蓮:「良かった」

美優:「蓮さんこそ、私なんかと一緒にいて楽しかったですか?」

蓮:「また『私なんか』ですか?」

優しく微笑む蓮。

蓮:「人生で一番幸せな時間でした」

美優:「本当ですか?」

蓮:「本当です」

最後にもう一度キスを交わす二人。


○新幹線車内 昼

帰路につく二人。美優、窓の外を眺めながら。

美優:「夢みたいでした」

蓮:「夢ではありません。私たちの大切な思い出です」

美優:「はい」

蓮:「また今度の週末、お時間はありますか?」

美優:「はい、大丈夫です」

蓮:「今度はどこに行きましょうか?」

美優:「蓮さんがいてくださればどこでも」

蓮:「私も同じです」

手を重ね合う二人。他の乗客の目を気にしながらも、離れていたくない気持ち。



○東京駅 新幹線ホーム 夕方

蓮:「気をつけてお帰りください」

美優:「はい。蓮さんも」

蓮:「今日は本当にありがとうございました」

美優:「こちらこそ」

人が多いため、握手で別れる二人。

蓮:「また明日」

美優:「また明日」

美優が改札に向かう。振り返ると、蓮がまだ見送っている。手を振り合う。


○美優のアパート 夜

美優が帰宅。健人が迎える。

健人:「おかえり、姉ちゃん。どうだった?」

美優:「楽しかった」

健人:「そっか。良かったね」

美優、鏡で自分を見る。表情がより女性らしくなっている。

モノローグ(美優):「私、変わったかも。蓮さんを愛して、愛されて…」

○神崎グループビル 蓮の専務室 同時刻

蓮、オフィスに戻って書類を整理している。

モノローグ(蓮):「美優さんと過ごした時間が、人生で一番大切な時間になった。この関係を絶対に守り抜きたい」

ナレーション(美優):「軽井沢で過ごした特別な時間は、私たちの愛をより深いものにしてくれた。秘密の関係だからこそ、より一層大切に感じられる。この幸せが続くことを信じて──」