社内パーティーの会場は、都内の五つ星ホテルの大宴会場。
煌びやかなシャンデリアの下、役員や取引先関係者がグラスを片手に談笑している。
私は秘書課の一員として受付や席案内を手伝いながら、ずっと胸の鼓動が落ち着かなかった。
——今日、颯真さんは私たちの関係を公表する。
本当に、全員の前で。
会場の中央付近、颯真は黒のタキシードに身を包み、完璧な笑顔で来賓と会話していた。
その横顔は冷静そのもので、いつものように私と目を合わせない。
……けれど、私が視線を向けた一瞬だけ、唇の端が僅かに上がった。
パーティーも中盤に差しかかった頃。
颯真が壇上へ上がり、マイクを手にした。
会場のざわめきが徐々に静まり、視線が一斉に集まる。
「本日はご多忙の中お集まりいただき、感謝申し上げます」
いつもの低くよく通る声。
定型の挨拶かと思っていた——その時だった。
「この場をお借りして、私事ではございますが、ご報告があります」
空気が変わった。
ざわ……と小さなざわめきが広がる。
「私、篠崎颯真は、半年前に結婚いたしました」
その言葉に、会場の空気が一瞬止まる。
次いで「え……?」という声があちこちから漏れる。
「お相手は、我が社秘書課の——」
颯真の視線が、まっすぐに私をとらえた。
心臓が喉から飛び出しそうになる。
「——彩花です」
周囲の視線が一斉に私に集まる。
息が詰まりそうなほどの注目の中、颯真が壇上から降りてきて、私の前で立ち止まった。
「来い」
差し出された手。
私は震える指先でそれを取った。
彼はそのまま壇上へ私を導き、マイク越しに会場全体へ告げた。
「彼女は、私の妻です。これからは堂々と、隣に立たせていただきます」
割れるような拍手。
私は恥ずかしさと嬉しさで胸がいっぱいになり、隣の颯真を見上げた。
「……本当に、みんなの前で言いましたね」
「言っただろう。もう隠さないって」
その笑顔は、昼の冷徹な上司ではなく——
私だけが知る、甘い夫の顔だった。
煌びやかなシャンデリアの下、役員や取引先関係者がグラスを片手に談笑している。
私は秘書課の一員として受付や席案内を手伝いながら、ずっと胸の鼓動が落ち着かなかった。
——今日、颯真さんは私たちの関係を公表する。
本当に、全員の前で。
会場の中央付近、颯真は黒のタキシードに身を包み、完璧な笑顔で来賓と会話していた。
その横顔は冷静そのもので、いつものように私と目を合わせない。
……けれど、私が視線を向けた一瞬だけ、唇の端が僅かに上がった。
パーティーも中盤に差しかかった頃。
颯真が壇上へ上がり、マイクを手にした。
会場のざわめきが徐々に静まり、視線が一斉に集まる。
「本日はご多忙の中お集まりいただき、感謝申し上げます」
いつもの低くよく通る声。
定型の挨拶かと思っていた——その時だった。
「この場をお借りして、私事ではございますが、ご報告があります」
空気が変わった。
ざわ……と小さなざわめきが広がる。
「私、篠崎颯真は、半年前に結婚いたしました」
その言葉に、会場の空気が一瞬止まる。
次いで「え……?」という声があちこちから漏れる。
「お相手は、我が社秘書課の——」
颯真の視線が、まっすぐに私をとらえた。
心臓が喉から飛び出しそうになる。
「——彩花です」
周囲の視線が一斉に私に集まる。
息が詰まりそうなほどの注目の中、颯真が壇上から降りてきて、私の前で立ち止まった。
「来い」
差し出された手。
私は震える指先でそれを取った。
彼はそのまま壇上へ私を導き、マイク越しに会場全体へ告げた。
「彼女は、私の妻です。これからは堂々と、隣に立たせていただきます」
割れるような拍手。
私は恥ずかしさと嬉しさで胸がいっぱいになり、隣の颯真を見上げた。
「……本当に、みんなの前で言いましたね」
「言っただろう。もう隠さないって」
その笑顔は、昼の冷徹な上司ではなく——
私だけが知る、甘い夫の顔だった。

