「美羽!」

 真神が急いで私を腕の中に引き戻した時には、白河会長はいつもの王子様スマイルに戻っていた。

「手芸部のみなさん、お疲れ様。これからも素敵な作品を作り続けてくれると嬉しいよ。これからはもっと生徒会とも仲良くして欲しいな」

 じゃあね、と手をひらりと泳がせて白河会長は部屋を出ていった。

 
 お、終わった……の?

 
「美羽ッッ!!」
 
「きゃーーっっ!!」

 
 なにこれ!
 全然終わってなんかない!!

 真神はがばっと抱きついてきたかと思うと制服のシャツでごしごしと私の口元を拭きだした。
 
 私はミートソース食べるの下手な子どもかっっ!!

「いったい痛い痛い!! 力! 強すぎ!!」
 
「だがあのカラスに美羽の、く、くち、唇をっ!」
 
「真神のバカー!! なーんで肝心な時にボケっとしてるのさ! うわあああん美羽ちゃんのキスがー! ボクもまだちゅーしたことないのにぃぃぃ!!」
 
「真神、計兎、落ち着きなさい! 美羽さんが潰れる!! あとその拭き方はすり減ります確実に!」
 
「すり減るって何!? 鹿弥さんが一番怖いこと言ってる!! 真神、いい加減に離してえええ!!」

「だめだ、美羽のすり減った部分も全部俺が集めて戻す!」

「戻るかーっっ!!」

 ……とまあ、全員パニック状態になってて、落ち着いた頃にはお昼を過ぎていた……なんて、笑えない話だよね。