「これって……!」

 トレンド1位は文化祭のハッシュタグ。
 それに次いで表示されたのは、「#手芸部」だった。

「手芸部で買ったよ〜。コスモスのハットピン! こないだ買ったキャップにつけたら世界にオンリーワンじゃない!?」
 
「#手芸部 #チャーム #かわいい ちょっと世界変わって見えるかも?」
 
「3組のフラペチーノに手芸部のコースターを添えて……♪」
 
「手芸部でイケメンに魔法かけてもらた! 週末の模試たぶんイケる(勉強しろー!)」

 手芸部のタグで検索すれば、いくらスクロールしても足りないほどに買った商品の投稿が溢れている。
 どれも楽しそうな写真や文章が添えられていて、数日前まで自分の手元にあったことが信じられないくらいに輝いていた。

「あっ」

 いいねの数がダントツな投稿を見つけた。
 手首に輝くブレスレットをアピールするような画角で撮られたその写真には、よく知った顔が映っている。

「#手芸部 #演劇部 #小道具感謝! #転生令嬢漂流記 #魅上涼主演 講堂にて上演中!」

「涼ちゃん……!」

 涼ちゃんの――演劇部のアカウントからの投稿だった。
 ちゃっかり、ううん、実力で主役の座を射止めた涼ちゃんは、主役権限でこの投稿を編集したに違いない。
 
「涼ちゃん、本当に悪役令嬢役じゃなかったんだ。転生令嬢だったんだ……!」
「いや、見るのはそこじゃないだろう」

 真神の至極まともなツッコミに感動の涙を引っ込める。
 そうだ、今気にするべきなのは涼ちゃんの役柄じゃなかった。
 目尻をぐいっと擦ってスマホの画面を先生に見せる。

「これで、お約束したすべてを達成しました。手芸部廃部は撤回――してもらえます、よね?」

 兼部していない3名の新入部員。
 文化祭での完売。
 学内SNSでトレンドワード2位。

 これで文句は言わせない。
 手芸部廃部を突きつけられたあの日から今まで、ずっとこの日のために頑張ってきたんだ。

 ぎゅっと眉間に力を込めて大橋先生を見据える。
 その時、違和感に気がついた。
 
 ガラス玉みたいな――目をしている。