廃部寸前な手芸部ですが、ユーレイ部員が助けてくれるようです!?

「ごめんね変なこと言って。忘れて」
 
 シャツの握っていたところが皺になってる。
 ぱっと手を開いて真神を押し返そうとしたけれど――

「忘れろ、なんて薄情だな」
 
「まか、みッ」

 痛いほどに、きつく背中を抱かれていた。
 真神のがっしりした腕がぎゅうと回されて、深呼吸もできないくらいだ。
 シャツの皺なんて気にすることも忘れるくらいに掻き抱かれて、夏服の薄い生地越しに真神のぬくもりが、ううん、熱が、私を覆い隠してしまいそう。

 とくんとくん、と鼓動が響く。
 
 これは私の? それとも真神の?
 
 混じり合いそうなほどに同じ速さのそれが、私たちを丸ごと包み込んでいる。
 
 
 人間とミサキガミ。
 生きている私と、魂だけになっていた真神。
 
 
 そんな区別、つけることもバカバカしいほどに私と真神はひとつになっていた。

「重い、なんて言うからどんな嬉しい束縛をくれるのかと思いきや……忘れろだなんてな」
 
「だ、だって普通こんなの重いでしょ」
 
「普通なんて知らん。俺はミサキガミだ。狼だ」
 
「いや、それはそうだけど」
 
「知っているか。狼は動物の中でもひときわ一途だ。(つがい)以外には脇目も振らない」
 
「そ、そうなの?」

 残念だけど、狼の生態には詳しくない。
 生物の授業じゃそんなの対象外だもの。
 
 だから知らない、と首を振ったつもり――だったけど、真神の腕の中でそんなことをしたら、顔が近づいて。

 吐息がかかる距離。
 熱烈な愛の告白からのこのシチュエーションは、ちょっぴりロマンチックが過ぎる。
 真神の手が、するりと私の手に重なる。指が絡まる。
 
「だから美羽も俺に一途でいて欲しい。俺の魂を生に繋ぎ止めてくれ。美羽になら首輪を着けられたって構わない」
 
「く、首輪……」

 ワンちゃんみたいに首輪を着けた狼姿の真神を想像してみる。
 リードを持っているのは私でも、右へ左へと振り回されてヘロッヘロになったところをぱくりと食べられるのがオチだ。
 イメージの中くらい一枚上手になれないものかなあ。

「美羽。返事は」
 
「あ、あう……えっと……」

 え、これって何て返せばいいの?
 首輪を着けてあげるって、それどんな愛の告白!?

 ちょっと待ってよ。
 愛って、告白って。
 そんな言葉が、すんなり自分の中から出てきたことにびっくりする。
 こんなこと今までなかったのに。
 そう、真神にしか――