「うん……私ね、自分の作品で誰かを笑顔にしたい。だから手芸が好きなの。手芸部を続けたいの。
 だってそうしたら、私の作品を手に取ってくれたひとが笑顔になれるかもしれない。ちょっとでもウキウキした気持ちになってくれるかもしれない。
 そしたら私も嬉しいし……また何か作ろうって思える。
 
 指先から生まれたものが広がって誰かの心を彩る。そんなお手伝いがしたいの!」

 
 心からほとばしる思いが止まらない。
 湧き上がる衝動のままに語ってしまう自分がアツくて、ちょっと恥ずかしくて、でも……それでもいいやって思える。
 
 
 だってこれが私だから。
 私がやりたいことだから。
 
 
 そう気づけたことで、世界を取り巻くフィルターが一枚分、クリアになったように見えた。
 
 
 とくんとくんと胸のあたりで鼓動がざわめきだす。
 じっとしているのがもったいないほど、お腹の奥で小さな炎がいくつも駆け巡っているみたい。
 顔が熱い。指先が勝手に動き出しそう。
 
 そんなふわふわした気持ちを抑えきれないまま、私にこれを尋ねてくれた鹿弥さんを見つめ返す。
 
 
「美羽さんのお考え、よくわかりましたよ。話してくださりありがとうございます」
 
「ふっふー♪ 美羽ちゃんたら、今すっごくいい顔してる。ね、真神」
 
「ああ。惚れ直すくらいに、な」
 
 ふっと唇をほころばせた真神が思わせぶりな目をするものだから、ちょっとドキッとする。
 でもどうしてだろう。目が離せない。
 
「美羽のおかげで方向性が決まった。美羽は文化祭に向けて、好きなものを作ってくれ」
 
「え?」
 
 どういうこと?
 今の流れのどこに突破口があったんだろう?
 
 私が首を傾げる。
 真神はそんな私の手を取り、指先に唇を寄せた。
 
「……っ」
 
 またこの狼は!
 流れるようになんつーことをするかなあ!
 
「この指から溢れる魔法を、美羽にも見えるようにしてやる」
 
「……?」
 
「見ておけ。ミサキガミの本領発揮だ」

 そう不敵に笑ってみせた真神は、遠吠えのように口笛を吹いた。